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第3部「がんと老い」(5)治療1回、5千万円   次世代免疫療法が上陸

2018.12.5 16:04 中沢祐人、米良治子
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 治療効果は高いが、価格も高い。がん免疫治療薬「オプジーボ」は患者1人当たり年約3500万円も費用がかかり、保険財政を揺るがしかねないと注目されたが、さらに高価な次世代の免疫治療法が現れた。
 
 スイス製薬大手のノバルティスは2018年4月、一部の血液がんの治療薬として国内で初めて「CAR―T細胞療法」の薬事承認を厚生労働省に申請した。製品名は「キムリア」。
 
 CAR―T細胞療法は、T細胞と呼ばれる患者の免疫細胞を遺伝子操作し、がんへの攻撃力を増強する新しい治療法。各国のメーカーが開発にしのぎを削る。キムリアは、がん細胞の表面にある「CD19」というタンパク質を標的とする。
 
米ニュージャージー州の工場で製造されるキムリア(提供写真)
米ニュージャージー州の工場で製造されるキムリア(提供写真)

 治療ではまず、患者の血液に含まれるT細胞を採取。これを米ニュージャージー州にある研究施設に送って人工遺伝子を導入し、点滴薬として再び患者の体内に戻す。通常の抗がん剤と違い1回の投与だけで効果が持続するという。

 米国では12年、白血病の再発で治療法がないとされた少女が臨床試験に参加。6年を経た今もがん細胞が消える「寛解」を維持し、キムリアの効果が広く知られた。成人のリンパ腫にも使われ、高齢者にも効果があったと報告されている。
 
 
 驚くのは価格だ。患者本人の細胞から特殊な工程で製造する〝オーダーメード〟の上、凍結保存した薬剤を厳重管理して輸送するため、米国での承認価格は子どもの白血病で治療1回47万5千ドル(約5200万円)に上った。成人のリンパ腫は37万3千ドル(約4100万円)。日本でも早ければ19年春までに保険適用される可能性がある。
 
 
 キムリアの対象患者は血液のがんに限られ、ノバルティス社は「巨大市場になることは想定していない」と説明する。ただ研究者の見立てでは、CAR―T細胞療法は他のがんにも応用できる。
 
(提供写真)
                        (提供写真)

 18年3月に山口大教授の玉田耕治(50)らの研究グループが発表した手法は、マウスで肺がんや膵臓がんにも効くことが確認された。19年中にも臨床試験が始まる。玉田は「世界中で研究が進んでいるので、いずれ血液がん以外でも成果は出てくるだろう」と強調する。

 そうなれば高齢者をはじめ多くの人々が恩恵を受けられる。だが、保険財政で賄いきれるのか。
鍵となりそうなのが薬の「費用対効果」を評価する新制度。費用に見合うだけの治療効果が得られない薬は、価格を引き下げる。厚労省は既に試験的運用を開始しており、18年春にはこの制度を使ってオプジーボなど2品目を値下げした。19年度の本格導入に向け、議論が進む。(敬称略、年齢・肩書は取材当時)
 

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