メニュー 閉じる

47NEWS

社会

社会

第2部「介護保険はどこへ」(5)専門学校、入学者集まらず 各地で閉鎖や定員割れ

2018.11.20 11:04 市川亨
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
 「高齢者のできないことではなく、できることを探す視点が大切です」。北海道福祉教育専門学校(室蘭市)の「介護の基本」をテーマにした授業。国家資格の介護福祉士を目指す学生たちが教員の話に耳を傾ける。

 隣の登別市から通う1年生の伊藤千滉(18)は高校で介護施設へボランティアに行った際、職員の笑顔や「ありがとう」と言う高齢者の姿を見て進路を決めた。「給料が低いと言われるけど、人の役に立てるやりがいのある仕事だと思う」
 
 だが今、こうした学生は急速に減っている。重労働や低賃金といったマイナスイメージがつきまとい、介護福祉士を養成する各地の専門学校は入学者が集まらず、定員割れが続く。同校も2018年4月の入学者は定員40人に対し18人で、半分を割った。
 
 運営法人の理事長、沢田豊(77)は「高校の進路指導の先生に『介護の仕事は給料が安くて結婚できないから、やめておけ』と言われてしまっている」と嘆く。
 
北海道福祉教育専門学校の介護福祉学科で授業を受ける学生たち
北海道福祉教育専門学校の介護福祉学科で授業を受ける学生たち

 

 政府による介護職の賃金引き上げ策により、他の産業との初任給の差はだいぶ縮まったが、十分認識されていないという。少子化のほか、好景気による求人増で学生が他業種や大都市部に流れていることも打撃だ。

 沢田が会長を務める全国団体「日本介護福祉士養成施設協会」によると、専門学校や大学などの入学者は06年度に全国で約1万9300人だったが、17年度には約7300人と4割弱に減少。定員充足率も72%から46%に落ち込んだ。
 
 学校の閉鎖や学生の募集停止も相次ぐ。熊本市では18年春、養成施設5カ所のうち1カ所が介護福祉士の学科を閉鎖。もう1カ所が募集を見送った。学科の閉鎖は同年、全国で11カ所に及ぶという。
 
 団塊の世代が全員75歳以上になる25年には要介護の高齢者が増え、介護人材は約33万7千人不足すると推計されている。ただ、沢田は「量の確保」ばかりを重視する国の姿勢に「質を軽視すれば結局は悪循環に陥る」と異を唱える。「きちんとした教育で人材を育てれば、ケアの質が高まり、『やってみたい』と思う若者も増えるだろう。社会的評価も上がり、待遇改善につながる好循環が生まれるはずだ」
 
 介護現場で働くのは無資格でも可能。資格を持っていても給与にそれほどの差はなく、十分評価されていないのが現状だ。「キャリアアップの仕組みを設け、しっかり処遇してほしい。そうしないと、学生は夢も希望も持てない」。沢田は語気を強めた。
 
(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

 

最新記事

関連記事 一覧へ