過剰な視聴は心に悪影響 「惨事報道」に注意 子どもは大人が配慮を

2022年07月19日
共同通信共同通信
 災害は体だけでなく心の健康にも影響を及ぼす。長期化する新型コロナウイルス流行に加え、最近ではロシアのウクライナ侵攻がもたらす心理的ストレスが懸念材料。特に心配なのが、過去のトラウマ(心的外傷)体験や精神疾患を抱える人、そして幼い子どもたちだ。目白大の重村淳教授(精神医学)は「戦争の当事者でなくても、メディアによる『惨事報道』にさらされることでメンタルヘルスが悪化する可能性がある。子どもらをストレスから守る工夫が必要だ」と話す。
ウクライナ・キーウ近郊で、避難のために乗ったバスの窓越しに外を見つめる子ども(AP=共同)
ウクライナ・キーウ近郊で、避難のために乗ったバスの窓越しに外を見つめる子ども(AP=共同)

 

 ▽怒りで悪化
 惨事報道とメンタルヘルスの関係を示す研究は多い。2001年の米中枢同時テロでは、ビルから落下する人をテレビで見ると心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病になりやすかった。13年の米ボストンマラソン連続爆破テロでは長時間のメディア報道を見ていた人ほど高い急性ストレス症状を示した。
 11年の東日本大震災で活動した災害派遣医療チーム(DMAT)の隊員は、被災地での経験に加えてテレビの災害報道に4時間以上さらされるとストレス障害のリスクが高まった。
 「災害というと日本では地震や台風などを考えがち。ただ海外では戦争や原発事故、航空機事故も災害に位置づけられる」と重村さん。「戦争などの人為災害では加害者への怒りや憤りが加わって症状が悪化し、治療が難しくなることがある」と指摘する。
 ▽見えない不安
 プーチン大統領による核威嚇やロシア軍の原子力施設攻撃は、東京電力福島第1原発事故の記憶を呼び起こした。重村さんは米研究者らとの論文で、コロナと並んで放射性物質による「見えない不安」が生む心理的影響を指摘。一般へのリスクコミュニケーション強化を呼びかけた。
 また重村さんらは「日本トラウマティック・ストレス学会」のホームページで、惨事報道を視聴する際のメンタルヘルスの注意点をまとめた資料を公開した。
 
 

 


 まずは戦場の惨状を伝えるニュースに接するのを必要最小限にするのがポイント。繰り返しの視聴や衝撃的な映像は避けた方がいい。家事の合間にテレビを「ながら見」していると不意にショッキングな場面が飛び込んでくることがある。つらい経験を抱える人は過去の思い出がよみがえって苦しみが増すこともある。
 子どもの場合、自分で視聴をコントロールするのは難しい。親や周囲の大人の配慮が必要だ。
 ▽受け取り方
 「同じニュースを見ていても大人と子どもでは受け取り方が違う」と重村さん。「戦地と自分の距離感が分からず、外国に出張する父親が死んでしまうのではと心配する子も。断片的な情報から考えが勝手に膨らんで不安になったり落ち込んだりしかねない」
 例えば家庭では夕方の1時間だけニュースを見るのが一つの方法。何を感じたか子どもに話してもらい、誤った理解や足りない情報があれば補ってやる。「一番良くないのが夕食の支度をしながら情報番組を流しっ放しにし、子どもがずっと見ている状態」という。
 過激な映像や写真にあふれるソーシャルメディアも要注意。深刻な事態が起きている時は、子どもの閲覧をある程度制限するのが望ましい。
 メディアの責任も重大だ。医療では人を傷つけない、害を及ぼさないのが大原則。報道の使命を踏まえつつ、受け手への悪影響を減らす配慮が求められている。
 だが最も深刻なのは戦争の当事者。重村さんは「ウクライナからの避難民など在日外国人の心のケアが今後の課題になる」とみている。(共同=吉村敬介)