全都道府県に運用が拡大 ドクターヘリ開始21年で 広域連携の拡充が課題

2022年06月22日
共同通信共同通信
 医師が空路で傷病者の元に駆け付けるドクターヘリ。本格運用の開始から21年たった今年春、東京都と香川県の導入によってようやく47都道府県の全てで運用が始まった。関係者は、導入するだけにとどまらず、都道府県境をまたいだ広域連携を一層拡充するなど、より効率的で機動的な救急医療体制を目指すべきだと訴えている。
稼働中のドクターヘリ(救急ヘリ病院ネットワーク提供)
稼働中のドクターヘリ(救急ヘリ病院ネットワーク提供)

 

 ▽東京と香川
 ドクターヘリのシステムは、ヘリポートを備えた医療機関など基地局となる施設に医療器材や搬送のための設備を備えたヘリコプターが待機し、消防の要請に応じて医師と看護師を乗せて離陸。事故現場や周辺の「ランデブーポイント」と呼ばれる合流地点に着陸し、到着した医師が搬送されてきた傷病者といち早く接触する仕組みだ。近年は、事故を起こした車から自動的に通報するシステムとの連動も進む。
 医師が駆け付けることで直ちに治療が始められるほか、けがや病気の状態を早期に把握して搬送先での手術などの受け入れ準備を整えることもできるため、患者の生存率や社会復帰率が高まることが実証されてきた。
 東京都では3月31日に立川市にある東京消防庁航空隊多摩航空センターを拠点とし、杏林大病院などの医師が交代で待機する形で運用を開始した。当初は東京23区を除く多摩地区を中心に運航することを見込んでいる。
 香川県は4月18日から、香川大病院(三木町)と香川県立中央病院(高松市)が1週間ごとに基地病院を分担する。
 ▽年間2万5千件
 ドクターヘリの普及啓発に取り組んできた認定NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」によると、日本におけるドクターヘリは、2001年4月に岡山県の川崎医科大病院を基地病院として本格運用が始まった。07年に「ドクターヘリ特別措置法」が整備されて以降、導入する自治体が徐々に増え、カバーエリアが拡大してきた。
 
 

 

 現在全国で運航されているドクターヘリは計56機。出動件数は、新型コロナウイルス感染症の流行によるとみられる事故の減少などの影響か、ここ2年は減ったものの、年間2万5千件以上で推移している。
 ただ、全都道府県で導入され、救急隊がちゅうちょなく出動を要請するべきだとの認識も広がったものの、出動範囲が依然、国土を覆っていないことが課題だ。
 同ネットワークの篠田伸夫理事長は「1機体制の府県は2機目導入の検討を」と期待を寄せる一方、「『自分の自治体のドクターヘリが優先的に飛ぶ』という、自県優先主義ともいうべき傾向が残っているのが残念だ」と指摘する。
 ▽県境越えて
 篠田さんによると、日本とほぼ同じ面積を有するドイツでは、70カ所以上の基地局から50キロ圏のエリアが国土を隙間なくカバーする。一方、日本は基地局から遠い地域や、ヘリが越えにくい高い山地を隔てた地域などが残っていて、隣県からの方がアクセスが容易な地域は多い。自県優先では住民がシステムの恩恵を平等に受けられない。
 「ポイントは県境を越えた〝生活圏〟での運用を図ることにある」と篠田さんは言う。
 例えば中国地方の5県では、ドクターヘリ広域連携についての基本協定を結び、患者が発生した当該県の基地局が現場から遠い場合、初めから隣県のドクターヘリの出動を要請できる。
 実際に、岡山県境に近い広島県内で起きた交通事故で岡山県ドクターヘリが出動したケースなど広域連携が奏功した事例が相次いで報告されている。到着時間の短縮に加え、その速度を生かして病院選定が容易になり、複数の傷病者を収容する場合に特に有効だ。(共同=由藤庸二郎)