被災時の食の備え、点検を 多めの水と熱源は必需品 災害食、日常食で7日分

2022年03月01日
共同通信共同通信
 地震や水害などで被災したとき、頼りになるのは備蓄した食べ物だが、災害食を漫然と防災リュックに詰めて、それきりにしていないだろうか。被災時にはショックや不安でただでさえ食が細くなりがちだ。水道やガスなどのライフラインが途切れる中で必要な分を食べつなげるかどうか。万が一のときに困らない食料備蓄の在り方を専門家に聞いた。
温かいおかず、汁物を添えた夕食が配られた東日本大震災の避難所=2011年4月、福島県相馬市
温かいおかず、汁物を添えた夕食が配られた東日本大震災の避難所=2011年4月、福島県相馬市

 

 ▽要配慮者は?
 医薬基盤・健康・栄養研究所の国際災害栄養研究室は、内外で発生した大災害による被災者の栄養状態への影響を調査し、対策を発信している。
 笠岡(坪山)宜代同研究室長は「家族の中に特別な配慮、支援が必要な人がいるかどうかで、必要な備蓄の内容は大きく変わる」と指摘する。特に配慮が要るのは「乳幼児」「高齢者」「妊婦」「持病がある人」「アレルギーがある人」などだ。
 同研究室が東日本大震災の1カ月後、避難所81施設で調査した結果、食事での困り事があったのは「ミルク・離乳食が必要な乳児」が最も多く「高齢や障害で普通食が食べられない人」が続く。「食物アレルギーのある人」「食事制限が必要な病気の人」も困っていた。
 ▽食べ慣れた物
 乳児はミルクが必須だ。被災時にはきれいな水、お湯の確保に困り、被災ストレスなどで母乳が十分に出ないこともある。一般的に水の必要量は1人1日3リットルが目安だが、粉ミルクを溶き、哺乳瓶を消毒するにはより多めの水を用意したい。
 「カセットこんろなどの熱源も要る。水と熱源があれば、温かく軟らかい物を食べられる。幼児や高齢者だけでなく、皆に役立つ必需品」と坪山さんは勧める。
医薬基盤・健康・栄養研究所の坪山宜代国際災害栄養研究室長(本人提供)
医薬基盤・健康・栄養研究所の坪山宜代国際災害栄養研究室長(本人提供)

 

 幼児は環境が変わると食べられず、脱水や体調不良の危険も高まる。大人に共通するポイントとして坪山さんは「普段から食べ慣れた物、好きな物を多めにストックするのがいい」と勧める。好きな物なら食べた分を自然と補充することになる。
 ぜひ実践してほしいのが「食べてみる訓練」。「ストック品の入れ替え時期に、水道やガスが止まった想定で家族そろって災害食を食べる。好き嫌いや、ないと不便な物も分かり、本番で困らなくなる」という。
 ▽おかず中心
 被災1カ月後の調査では、避難者の栄養価の偏りも明らかだった。不足したのは「牛乳・乳製品」「肉」「野菜」。過剰なのは「菓子パン・インスタント麺など炭水化物」。生活習慣病の人ではそれだけで体調悪化が心配だが、被災時にそこまで気を使えるだろうか。
 同研究室の別の研究が参考になる。東日本大震災の避難所での食事を栄養面から解析すると、主菜、副菜のどちらかを提供した避難所の方が栄養面で優れていた。この研究では、おかずの内容は問わなかった。つまり「おかずを用意しようとすると、自然と栄養バランスが整う」わけだ。
 坪山さんは「一品で食事にするご飯類や麺類ばかりでなく、調理不要で開封すれば食べられるレトルト食品や缶詰、日持ちのする野菜や乳製品などを保存することを心掛けるといい」と話した。
 家庭での備蓄量は、東日本大震災の後、従来の3日分から1週間分とするよう推奨が改められた。災害食で3日分、普段食べている食品のストックの更新(ローリングストック)で4日分を備えるのが目安。ただ、要配慮者向けの粉ミルクや制限食は被災地への供給遅れが懸念され、さらに多めが望ましい。
 備蓄方法の詳細は農林水産省が「災害時に備えた食品ストックガイド」にまとめ、同省ウェブサイトで一般版と要配慮者版の2種類を公開している。(共同=由藤庸二郎)