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危ない脂肪肝を見つける 新たな疾患定義を提案 専門医ら「MAFLD」

2021.10.26 0:00
 中性脂肪が肝臓にたまる「脂肪肝」は、健康診断で多くの人に見つかる病気だ。病状が進行しない人もいるが、肝硬変や肝がんに悪化する場合もある。こうした“危ない脂肪肝”を見つけるのに役立つ新たな疾患定義を国際的な専門医のグループが提案した。「代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)」と名付けられ、診断基準の確立に向けた研究が各国で進む。日本からグループに参加した久留米大の川口巧 准教授(消化器内科)は「患者の体質に応じたきめ細かい治療につながる」と期待する。
脂肪肝の新たな疾患定義「MAFLD」を提案した久留米大の川口巧准教授(本人提供)
脂肪肝の新たな疾患定義「MAFLD」を提案した久留米大の川口巧准教授(本人提供)

 

 ▽盲点
 脂肪肝は食べ過ぎや運動不足、お酒の飲み過ぎなどが主な原因と考えられてきた。だが糖尿病や高脂血症などの代謝異常が関わるものも少なくない。脂肪肝に代謝異常が加わると、肝硬変や肝がんに進行しやすくなることが最近の研究で明らかになってきた。
 現在の脂肪肝は飲酒量や肝炎ウイルス感染の有無で分類され、代謝異常の有無は加味されていない。ウイルス性肝炎などがなく、1日の飲酒量がそれほど多くない人は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と診断される。
 NAFLDは1980年に提唱された。川口さんは「食べ過ぎや運動不足による脂肪肝の人に食生活改善や運動を促すのに役立った」とこれまでの意義を評価。一方で「肝硬変や肝がんのリスク要因である肥満や糖尿病などの代謝異常が、診断基準に組み込まれていないのが盲点だ。危ない脂肪肝を明確に区別する必要がある」と話す。
 ▽痩せのリスク
 昨年4月、川口さんを含む22カ国の専門医32人が、国際的な医学誌「ジャーナル・オブ・ヘパトロジー」に、代謝異常の有無を考慮した脂肪肝の新たな疾患定義MAFLDを発表した。
 画像診断に加えて血液検査などで脂肪肝と判定された人が対象。過体重または肥満の人、2型糖尿病の人はMAFLDと診断される。太った脂肪肝の人は肝硬変になりやすい。糖尿病と同様に生活習慣の改善に加えて代謝異常の薬による治療を積極的に試みる。

 
 

 

 難しいのが、痩せているか正常体重なのに脂肪肝の人。もともと肝臓に脂肪がたまりやすい体質の可能性がある。こうした人は腹囲や血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、耐糖能などを検査し、複数が該当すればMAFLDと診断する。この場合も病状に合った薬で積極的に治療する。
 「痩せのMAFLDは肥満のMAFLDよりリスクが高いとの報告もある」と川口さん。「少量でも飲酒による影響が懸念される。見落とされがちだった危ない脂肪肝の人に、食生活や運動に特に気を付けてもらうきっかけになる」と話す。
 ▽早期発見
 川口さんはMAFLDの診断の有効性を実際の患者データで検証した。
 2017~19年に佐賀県健診・検査センターを受診した765人のデータを分析。MAFLDを診断基準にすると、従来のNAFLDを基準にした場合と比べ、病状が進行した「肝線維化」が起きている患者を20%多く見つけることができた。早期発見による治療開始が期待できる。
 他にも動脈硬化や大腸ポリープの発症予測に有効なことを確かめた。
 ただ欧米人と日本人では肥満などの評価基準が異なる。NAFLDに代わる診断基準として学会の治療ガイドラインに反映させるには、さらに臨床研究を重ねて有効性を確立することが必要だ。川口さんは「日本人に適したMAFLDの診断基準づくりを進めたい」と語る。(共同=吉村敬介)

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