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療養指導は個別化の時代 糖尿病ガイドライン改訂 チーム医療で目標示す 

2020.10.20 0:00
 2型糖尿病は、薬剤の進歩で合併症を起こさずに病気の進行を抑えることが可能になったが、生活習慣病といわれるように、食事や運動などによる患者の生活改善も欠かせない。ただ、従来の指導は患者に厳しく、生活改善や治療からドロップアウトするケースさえあった。日本糖尿病学会は昨年、診療ガイドラインを改訂し、患者の事情や希望に配慮した療養指導へと大きくかじを切った。
 ▽患者の様変わり
 「ガイドラインを見直したのは、患者の病態や年齢構成が様変わりしたため」と、策定委員として改訂に携わった宇都宮一典慈恵医大総合健診・予防医学センター長(糖尿病学)は話す。
新しい糖尿病療養指導について語る宇都宮一典慈恵医大総合健診・予防医学センター長=東京都港区
新しい糖尿病療養指導について語る宇都宮一典慈恵医大総合健診・予防医学センター長=東京都港区

 


 宇都宮さんによると、昭和の日本では肥満は少なく、血糖値を抑えるホルモン「インスリン」の分泌が少ないタイプの2型糖尿病が多かった。これは東アジア全域で今も見られる傾向だ。
 ただ、食生活の向上や欧米化といった質的な変化により、内臓脂肪が増えてインスリンは分泌されるがその効きが悪くなる「インスリン抵抗性型」の糖尿病も増えた。
 「糖尿病合併症は以前は網膜症や腎症が多かったが、この変化で動脈硬化や高血圧の合併による心臓や脳などの循環器疾患が目立つ」という。
 患者の年齢構成を見ると、高齢化に伴って高齢者が増えている。ただ高齢者は、食事制限で痩せることがかえって虚弱を招き、寝たきりや介護につながる危険性が指摘される。半面、肥満の小児が増えたことで若年層でも糖尿病になる人が現れた。「一律の基準を当てはめられないことは明らかだった」と改訂の意義を説明する。
 ▽二つの基準
 特に問題になったのは「体格指数(BMI)22を理想の『標準体重』とする」ことと「必要エネルギーの算出方法」という、いずれも従来の療養指導で基準となる考え方。いずれも新しい研究で課題が見つかった。
 BMIは体重(キログラム)をメートルで表した身長の2乗で割ったもの。「従来の療養指導では22を標準としていたが、2015年発表の国際共同研究では、死亡率が低く望ましいBMIは20から25まで幅があることが分かってきた」という。

 
 

 

 70歳以上の高齢者では、BMIが30に近くなっても死亡率がさほど上がらない。むしろ食事を抑えることにより体力の衰え、全身の虚弱(フレイル)を招く危険性が指摘されている。
 もう一つの「必要エネルギー」は、これまでデスクワークなどの軽い労働作業から、力仕事などの重いものまで3段階で必要エネルギーを算出し、理想体重BMI22にするために食事による摂取量を決めてきた。
 しかしこちらも、実際の必要量は個人ごとに大差があり、しかも、従来基準は必要量に比べ過小で、患者によっては実効性に欠ける可能性が明らかになってきたという。
 ▽希望を伝えて
 新しいガイドラインではこうした研究の進展を考慮。医師のほか看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士らのチーム医療を推奨し、専門の立場から意見を述べ合って個々の患者にふさわしい目標を設定するよう求めた。
 「患者が『これは耐えられない、できない』と思って生活改善を諦めてしまうのでは本末転倒。実現可能な当面の目標を立てるのが重要です」と宇都宮さん。
 こうした新しい考え方に基づけば、患者は治療方針を医療者任せにはしない姿勢が大切だという。宇都宮さんは「病気が進むリスクをきちんと理解した上で、食事や運動、仕事などで自分のしたいこと、できることを率直に医療者側に伝えてほしい」と話している。(共同=由藤庸二郎)

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