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日頃から主治医に相談を お薬手帳は忘れずに 慢性病患者の災害対策

2018.11.13 0:00

 今年は列島各地で地震や台風、豪雨など災害が相次ぎ、多くの住民が避難を余儀なくされた。そんなとき、人工透析に通う腎不全患者、日々の服薬や注射が欠かせない糖尿病患者はどう対処したらいいのか。専門家は、患者が病状や薬剤を理解して、避難時はお薬手帳を忘れず持ち出し、日頃から万一の際の対処方法を主治医に相談しておくことを勧めている。

 
 電気の多量の水を必要とする人工透析装置(仁真会白鷺病院)

 ▽電気と水が必須

 透析患者は、一般的に週3回の透析で血液中の老廃物などを除去する必要があり、受けられないと生命に関わる。9月の北海道地震では、全域停電により一部の病院で人工透析ができなくなった。

 大阪市東住吉区の仁真会白鷺病院にも多くの透析患者が通う。病院理事長の山川智之・日本透析医会常務理事によると、標準的な1回4時間の人工透析では、機械を動かし続ける電気と、1人最低120リットルの水を必要とする。いつもの透析病院が被災して透析できなかったり遠方に避難したりした場合は、別の病院に行く必要がある。

 2000年、「日本透析医会災害時情報ネットワーク」のウェブサイトが開設され、病院が被災情報を書き込めるようになった。その後、メーリングリストも設けられ、国や自治体、医療機関同士で情報交換する仕組みも整った。情報共有の必要性が知られるようになった今では年1回の災害対策訓練に全国4千余の透析施設の約半数が参加するまでになった。

 ▽周囲も配慮を

 山川さんは「避難後にまず透析病院に連絡を」と強調する。被災で透析できない場合は、他の病院に依頼するなど患者が透析を受けられる手だてを講じる。だが、病院側が避難患者を探しだすのは難しい。避難先に落ち着いたらまず透析病院に連絡を取り、指示を受けてほしいという。中には自力で病院に通えない患者を家族や介護職員が送迎するケースも。山川さんは、災害の混乱の中で患者が透析を受けられないようなことがないよう、周囲の人々が十分に配慮してほしいと訴えた。

 多くの腎不全患者は高血圧や糖尿病の薬を服用している。薬を避難先で速やかに入手するためにも、お薬手帳は必須だ。透析後の目標体重(ドライウエート)を覚えておくと、別施設でもよりスムーズに透析を受けられるという。

 
 インスリン注射が必要な患者向け「災害時サポートマニュアル」

 ▽リストで備え

 糖尿病患者も、薬の調達や体調維持が難しい災害弱者といえる。日本糖尿病協会(東京)は「糖尿病患者さんの災害への備え」と題して各種のマニュアルをウェブサイトで無償公開している。

 マニュアルではふだんと違う避難生活での対処法を紹介。糖尿病の薬を飲んでいる場合は、食事が取れなければ服用を休み、食べられれば食事量に応じて用量を加減することなどを指摘している。

 インスリン注射が必須の糖尿病患者向けには、別途個別のマニュアルを公開し、インスリン注射を中止せずに容量を加減するよう勧めている。日常とかけ離れた避難生活の中で薬を調整するのは容易ではない。平時から主治医や薬剤師と相談し、各自の病状に合わせた“ルール”を知っておくべきだという。

 インスリン注射が必要な患者が持ち出すべき物として、注射セット、経口薬、血糖自己測定器と消毒用の綿など、お薬手帳を挙げ、ふだんの治療内容、合併症の検査結果などの記録もあった方がいいとしている。

 近年、避難所には医師や看護師、薬剤師らの支援チームが駆け付けるシステムが整った。腎臓病や糖尿病に限らず、心身の不調や心配事があれば、医療者か避難所管理者に遠慮なく伝えることが大切だ。

(共同通信 由藤庸二郎)

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