流行の波、繰り返す 日本の対策に懸念 新型コロナの今後は

2022年08月30日
共同通信共同通信
 新型コロナウイルス感染症の流行は第7波に及ぶが、今後はどうなるだろうか。オミクロン株は感染力が強いが、重症化のリスクは以前のデルタ株に比べて低いとされる。感染症の流行を把握するサーベイランスに取り組んできた国立病院機構三重病院の谷口清州院長は「数年かけて大小の流行の波を繰り返し、季節性の風邪のような形に落ち着くのではないか」とみる。
 ただ重症化する人は出るし後遺症も増える。「無用な感染を避けるため、しばらくはリスクが高い場面でマスク着用などを続けるのが望ましい」と話す。
国立病院機構三重病院の谷口清州院長
国立病院機構三重病院の谷口清州院長

 

 ▽エンデミック
 日本では国民の地道な感染対策に加え、ワクチン接種が流行の波を抑えるのに役割を果たした。ただ既存のワクチンはオミクロン株の感染予防効果が低い。接種から半年ほどたつと入院を防ぐ効果も徐々に落ちる。
 国内のオミクロン株は「BA・2」系統が多かったが、別系統の「BA・5」に置き換わりが進む。「BA・5は過去の自然感染やワクチン接種による免疫から逃れやすく、再感染が起きやすいと言われる」と谷口さん。時間がたって集団の免疫レベルが下がると感染者が増え、上がると減ることが繰り返されると予想される。ウイルスが消え去る望みはない。
 「何度も感染することで免疫が引き上げられて多くの人の症状が軽くなり、季節によって地域で流行を繰り返す『エンデミック』な感染症になっていくのではないか」と話す。
 ▽長期的影響
 ただコロナ感染が健康にどんな影響を及ぼすかは未解明な点が多い。日本小児科学会によると、オミクロン株に感染した子どもではデルタ株に比べて熱性けいれんが起きる割合が高まっていた。
 後遺症の増加も懸念材料。英国の大規模データベースの分析では、軽症の感染者でも脳の組織に萎縮が起きていることが分かった。糖尿病やアルツハイマー病といった疾患のリスクが高まる可能性も示された。長期的な影響を考えるとワクチンで免疫をつけ、できるだけ感染を避けるのが無難だ。
マスクを着用して東京・渋谷のスクランブル交差点を歩く人たち=7月
マスクを着用して東京・渋谷のスクランブル交差点を歩く人たち=7月

 

 冬を迎えた南半球のオーストラリアではインフルエンザが猛威を振るう。「日本でも冬にかけてコロナとインフルの同時流行が起きる可能性がある」と谷口さんは話す。しばらくインフル流行がなかったため免疫を持たない子どもに重い症状が出るかもしれない。
 ▽ボトムアップ
 コロナ流行が長期化すると、さらに新たな変異株が登場しかねない。未知の病原体が次のパンデミックを引き起こす可能性もある。そんな事態に日本はコロナの教訓を生かせるのだろうか。
 政府は6月、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理庁」の創設や、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした「日本版CDC」の新設を決めた。有識者会議による検証報告書を受けた対応だ。
 ただ谷口さんは「トップダウン式の組織だけではうまく機能しない」と話す。「迅速な流行状況の把握には、医療現場や保健所の声を反映させたボトムアップ式の仕組みが必要だ」と指摘する。
 今回のコロナ流行では「HER―SYS(ハーシス)」と呼ばれる国の感染者情報システムの入力項目が多すぎて迅速な運用に支障が出た。米国では簡便な報告システムと電子カルテ情報を組み合わせた機動的な仕組みが運用されている。「求められているのはリスクコミュニケーションのあり方を含めた国全体の意識改革だ。入れ物だけで中身が伴わない改革ではいずれ立ち行かなくなる」と訴える。(共同=吉村敬介)