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医療新世紀

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健康と環境に優しい食事を 日本人に適した改善提案 全粒穀増やし、肉減らす

2022.8.2 0:00
 バランスの取れた食事は健康づくりに大切だが、地球環境への配慮を加えるのは難しい。東京大の佐々木敏教授(社会予防疫学)のチームは、玄米など全粒穀物の摂取量を増やす一方、牛肉や加工肉を減らすことなどで、健康と環境を両立した日本人の食生活が実現できそうだとする研究結果をまとめた。清涼飲料やお酒、調味料や菓子の取り過ぎも要注意。佐々木さんは「実行できそうな三つほどの項目を選んで、食生活の改善に取り組んでほしい」と話す。
玄米と小豆のご飯と、全粒小麦粉で作ったパン
玄米と小豆のご飯と、全粒小麦粉で作ったパン

 

 ▽3分の1
 食品生産に伴う温室効果ガスは世界の排出量の3分の1を占める。地球温暖化防止のパリ協定の目標達成には、エネルギー分野だけでなく食生活の改善も必要だ。
 今回の研究の中心となったのは東邦大の杉本南・助教。佐々木さんのチームで行った過去の研究では、健康的な食生活の日本人は食事由来の温室効果ガス排出量が多いことが示された。欧米とは逆の傾向で食材の違いなどが関係しているらしい。
 ただ環境のために食生活を欧米化するのは無理がある。「日本人に向いた健康で持続可能な食事を探ろう」。こう考えた杉本さんは、日本人369人の食事データを使い詳細な分析を実施した。
 ▽糖尿病を予防
 まず欧州4カ国の食事を分析したオランダの研究手法を参考に、病気になりにくい食習慣の145人を対象者から選定。いわば健康面で〝合格〟の人たちだ。
 次に〝不合格〟だった224人の食事をどう改善したら合格するか1人ずつ分析。栄養面だけでなく温室効果ガスの排出量が少なく、食習慣の変化が小さい上に費用もかさまない最適なバランスを探った。最後に20種類以上の食品グループに分けて必要な増減の度合いを男女別に平均化した。
 すると胚芽や種皮を含む全粒穀物の摂取量を大きく増やすことが必要と分かった。玄米や雑穀米、全粒小麦粉で作ったパンなどが代表例。女性は4倍、男性は6倍に増やすのが望ましい。
 「日本人は欧米人に比べて全粒穀物の摂取量が少ない」と佐々木さん。「食物繊維を多く含み、糖質の吸収を緩やかにして血糖値が上がりにくい。糖尿病の予防に役立つ」と指摘する。
 
 

 

 ▽シンボル
 逆に牛肉や豚肉、加工肉は2~3割減らした方が良さそうだ。大腸がんのリスク要因だが、この場合は環境への負荷が非常に大きい。杉本さんは「牛肉は生産段階で鶏肉の5倍以上の温室効果ガスを出す。多くの土地やエネルギーが必要で持続可能性が低い」と話す。
 さまざまな病気の原因となるアルコール飲料や、塩分が多いみそやしょうゆなどの調味料も削減が必要。肥満のもとになる砂糖や菓子類も減らした方が良い。逆に果物や豆・種実、乳製品は増やすべきだ。
 興味深いのがソーダやジュースなどの清涼飲料。摂取量の半減が望ましい。佐々木さんは「清涼飲料は食生活の健康度を示す『シンボルフード』と言える」と語る。
 日本人は米国人に比べて飲む量が少なく、糖分による健康影響はそれほど大きくなさそう。ただ日常的な愛飲者はスナックなどを一緒に食べている可能性がある。清涼飲料を多く飲む人は菓子や油脂類の摂取量が多いとの研究もある。
 今回の結果は195カ国の食生活を分析した2019年の国際研究とも一致する。英医学誌ランセットの論文では、日本人の食事は塩分が過剰で、全粒穀物や果物が不足と指摘されている。
 佐々木さんは「科学的根拠に基づいて日本人に適した新たな食品摂取基準を作るための一歩になる」と話す。(共同=吉村敬介)

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