「コロナ後」日本に役割 国際保健体制の強化を Gavi事務局長

▽公平へ前進
Gaviは2000年の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で発足。予防可能な感染症に苦しむ途上国の子どもたちにワクチンを提供する。財団や欧米諸国、日本などが資金を拠出。20年間で8億9千万人にB型肝炎やポリオ、はしかなどの予防接種を行い、1500万人の命を救えたとしている。
20年からはコロナワクチンの公平供給の枠組み「COVAX(コバックス)」の中核を担う。「高所得国がワクチンを買い占めるのは明白なので介入する必要があった」とバークリー氏。途上国向けの資金調達やワクチン確保に足踏みした時期もあったが、これまでに140カ国以上に14億回分のワクチンを届けた。
「COVAXが支援する低所得国と中・低所得国でのワクチン接種率は平均40%に高まった。世界全体は58%なのでまだ公平とは言えないが前進している」と話す。
▽追加支援
懸念されるのがコロナ流行の影響で他の感染症の予防接種が遅れる事態だ。一時は接種数が大きく減少した。「コロナによる超過死亡は報告されている死者数の3倍とも言われる。接種を受けられずに肝炎やはしかで命を落とす人が含まれる。パンデミックでも通常の接種を進めることが必要だ」と訴える。

国際通貨基金(IMF)は、コロナによる経済損失が24年までに13兆8千億ドル(約1770兆円)に達すると試算。「それよりはるかに少ない資金でワクチンを購入し、人命や経済への影響を抑えることができる。各国の資金支援が必要だ」と強調する。
バークリー氏は3月に訪日し、COVAXへのさらなる支援を要請。日本は4月のオンライン首脳級会合で最大5億ドルの追加拠出を表明した。各国が約束した拠出額は計48億ドルになった。
▽平時と有事
会合では将来の大流行に備えて資金やワクチンを用意しておく「パンデミック・ワクチン・プール」の仕組みも議論された。「コロナの新たな変異株に加えて未知の感染症が登場する可能性もある」と指摘。「今回は備えが足りなかった。次のパンデミックに向けて国際保健体制の強化が必要だ」と話す。
デルタ株の流行時にはインドから途上国向けのワクチン輸出が滞った。有事でも国境を越えた協力関係の維持が求められる。
「ネットワーク型のアプローチが有効だ」とバークリー氏。さまざまな組織が平時は別々の活動をしていても、いざという時に互いに連携して人員や資金を動かす。世界保健機関(WHO)で議論が進む「パンデミック条約」が連携の後押しとなることも期待する。
今年のG7はドイツで開かれるがコロナ流行はまだ収まりそうにない。来年の議長国を務める日本がコロナ後の国際保健体制強化のまとめ役を任される公算が大きい。「日本は資金面で大きな貢献をしてきた。来年は誰一人として取り残さない世界の実現に向けたリーダーシップに期待したい」と語る。(共同=吉村敬介)