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医療新世紀

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認知症、恐れず備えを 在宅医療で支える  共生へ社会づくりも

2022.1.4 0:00
 今や高齢者の4人に1人が認知症かその予備軍だ。長生きすると誰もが当事者になりうる。「だからこそ恐れることなく認知症に備え、みんなが住みやすい社会をつくろう」と話すのは、福岡市東区で在宅医療を手掛ける「たろうクリニック」の内田直樹院長。尊厳と生きがいを持って自宅や施設などで安心して暮らせるよう支援する。認知症の人材バンクの設立に関わるなど新たな「共生」への道も探る。
お年寄りを訪問診療する「たろうクリニック」の内田直樹院長=2018年、福岡市東区(内田さん提供)
お年寄りを訪問診療する「たろうクリニック」の内田直樹院長=2018年、福岡市東区(内田さん提供)

 

 ▽チームで訪問
 クリニックは福岡都市圏の端に位置する。医師と看護師が10組ほどのチームに分かれ、車で市内を駆け回る。各チームが1日に十数人を訪れ、健康状態や生活上の問題をチェック。必要に応じて薬の処方や点滴も行う。
 訪問先は高齢者施設が7割、自宅が3割ほど。地域のケアマネジャーなどから相談を受け、月数十件の初診がある。病気などで自力で通院できず、多くが認知症の状態。市内の約千人を定期的に訪問し、トラブルに24時間態勢で対応する。
 内田さんは精神科が専門だが、実際の診療では糖尿病や心臓病などあらゆる疾患を扱う。「体と心の両方の不調を和らげることが必要。多様な専門スタッフによるチーム医療が鍵だ」と話す。
 ▽不安も要因
 認知症の症状はさまざま。日時や自分の居場所が分からなくなる。必要な薬を飲まなかったり飲み過ぎたりする。夜中に冷蔵庫の中のものを食べ散らかす。徘徊(はいかい)したり大声を出したりする。
 周囲の人が手が付けられなくなったケースが多いが「実は本人の不安や混乱がさらなる悪化を招いていることが少なくない」と内田さん。薬の処方の改善や不安となる要因を身の回りからなくすことでトラブルの多くを減らせる。かかりつけ医を中心に、認知症に対する正しい知識が不足していることも背景にあるとみている。
 訪問診療は外来診療と違って生活の場を訪れて話すことで多くの情報が得られる。精神科医の経験が生かせる仕事だ。
 新型コロナウイルスの流行前、パソコンやスマートフォンを使ったオンライン診療の試みを始めた。医師や看護師の移動時間を減らして診療を効率化する狙い。コロナ流行の影響で訪問回数が減ったが、一部はつながりを維持できた。「離れて見守ることができるメリットは大きい。直接診療には代えられないが補完的な役割が期待できる」とみる。
 ▽軽度のうちに
 病気に対する考え方や社会の在り方も変える必要があると感じている。
 内田さんは福岡市が今年始めた「オレンジ人材バンク」の設立に関わった。認知症の人を支援し社会で活躍してもらう目的。企業が認知症の人向けの商品を開発する際に、当事者が試作品をモニターして使いやすさや改善点を伝えてもらう。もともと持っていた裁縫や工芸などの得意技を再び発揮してもらう試みもある。
 周囲の人が何でもやってあげるようになると、役割や生きる目的が失われ、社会とのつながりも絶たれて症状が進行しがち。「勤務先の理解や支援があれば店舗などで働くことも十分にできる。活力と生きがいを取り戻すのにつながる」と指摘する。
 「軽度の認知症なら『年を取ったせい』で済ませるのに、重度になるといきなり恐怖の対象になるのがそもそも認識の間違い」と内田さん。「いずれみんなが認知症になる。恐れることなく、まだ軽度のうちから家族や医師と将来の暮らし方について話し合い、先行きを準備しておいてほしい」と語る。(共同=吉村敬介)

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