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医療新世紀

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医療用RI、国産化に課題 検査、治療に需要高まる 研究用原子炉も活用へ

2021.11.23 0:00
 検査やがん治療のために体に入れる放射性物質(ラジオアイソトープ=RI)の供給を輸入に頼らず、一定量を国産化するべきだという声が強まっている。医療の進歩により、こうしたRIの需要は年々高まる一方だが、製造を担う海外の原子炉のトラブルでRIの輸入が滞ることが相次ぎ、供給は不安定だ。事態の打開を目指し、昨年来、関係学会や患者団体から国産化の要望が国に提出された。その必要性と課題をまとめた。
 ▽体内に投与
 検査や治療を目的として体に投与する放射性物質を「放射性医薬品」、そうした医療を「核医学」と呼び、体の外から放射線を照射する他の放射線医学と区別している。

 
 

 

 核医学の検査は、ある種の放射性物質を特定の臓器や組織、病巣に集中させて写し出す。シンチグラフィー検査、陽電子放射断層撮影(PET)検査などが代表的だ。
 医療用RIの供給に携わる公益社団法人日本アイソトープ協会(東京)の調査によると、国内では2017年、がんが骨へ転移しているかどうかを検出するなどの骨・関節シンチグラフィーが計約35万件、心臓や血管の検査が約30万件、脳や脊髄が約25万件など。医療現場に不可欠の技術になっている。
 急速な進歩を見せるのが核医学による「治療」。特にがん治療だ。特定のがんに結び付く性質を持たせた放射性医薬品を投与し、至近距離から放射線でがんをたたく。
 ヨウ素による甲状腺がん治療が知られているが、近年、進行性の前立腺がんに対するルテチウムやアクチニウムによる「PSMA」、悪性神経内分泌腫瘍に対するルテチウムによる「PRRT」などの新たな治療法が開発された。日本で治療を受けられない患者が経済的、身体的負担を覚悟で海外へ渡る現状から、いずれ国内での治療も増えるとみられる。
 ▽需給逼迫
 ただ、そこで問題になるのが安定供給だ。日本はシンチグラフィーに用いる「モリブデン99/テクネチウム99m」を米国に次いで大量に消費しているが、供給は100%輸入に頼る。09年、カナダの生産用原子炉がトラブルで停止し、需給が逼迫(ひっぱく)。その後も原子炉の停止や精製施設のトラブル、最近は新型コロナウイルス感染症による輸送停止などにより、たびたび供給が危ぶまれた。
 放射性医薬品に使われる放射性物質は半減期が短く、貯蔵や保管は極めて難しい。また、各国で生産に利用中の原子炉はいずれも古く、経年劣化により、いつ運転停止に至るか分からない。
日本原子力研究開発機構の試験研究炉「JRR3」=茨城県東海村(同機構提供)
日本原子力研究開発機構の試験研究炉「JRR3」=茨城県東海村(同機構提供)

 


 ▽要望書
 こうした事態に、日本医学放射線学会など7医学会は昨年8月、日本原子力研究開発機構(原子力機構)の試験研究炉「JRR3」と、高速実験炉「常陽」を利用して、放射性医薬品用の放射性物質の国産化を進めるよう国と原子力機構に要望書を提出。がん患者を支援するNPO法人や患者団体も追随した。
 JRR3では、がん治療に使う放射性のイリジウムと金を製造。東日本大震災後の新規制基準への対応で今年2月まで運転を止めたが、今年7月の製造再開後はイリジウムの国内需要の全量、金も約70%を賄っていける見込みだ。
 原子力機構はまた、JRR3で新しい製造方法によるモリブデン生産に試験的に取り組む。ただ、現状のJRR3の設備や人員体制を整えて実用化に成功しても、モリブデンの供給量は国内需要の20~30%にとどまる。設備増強や人材育成などの検討が必要だとした。
 核医学で使われる放射性物質は種類も量も今後急増が見込まれる。新しい製造用原子炉の整備も含め、国として長期的な取り組みが求められる。(共同=由藤庸二郎)

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