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医療新世紀

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子どもの弱視、早期発見を 「屈折検査」普及目指す 3歳児健診で眼科医会

2021.11.2 0:00

 子どもの視力は生まれてから6歳ぐらいまで発達していく。この間に目に異常があると、物を見極める能力が十分に育たない弱視のままになる恐れがあるが、早期に発見して治療すれば回復が期待できる。近年開発された小型の機器を使う「屈折検査」の活用が自治体による3歳児健診の現場で始まり、弱視の検出率が大幅に向上することが分かってきた。日本眼科医会は検査の導入マニュアルを公開し、さらなる普及を呼び掛けている。

日本眼科医会の白根雅子会長=広島県府中町(本人提供)
日本眼科医会の白根雅子会長=広島県府中町(本人提供)

 

 ▽発達のリミット
 日本眼科医会会長で、広島県府中町で眼科を開設している白根雅子院長によると、弱視とは見えにくい症状の総称で、子どもの場合、その原因は遠視、乱視、強い近視、左右の見え方が違う「不同視」、斜視、先天性の白内障など多様だ。
 「視力発達のポイントは眼球だけではなく、脳が関与する」と白根さん。「物を見るための、目から脳の視覚中枢に至る経路の働きは、生後6年ほどまでに成長、確立する。感受性が高いこの時期に物の像がきちんと見えることが見る能力、視力を獲得する刺激になる」と解説する。
 3歳児健診の時期からそれぞれの原因を治療できれば、視覚の発達を促すことができる。一方で、6歳ぐらいの発達のリミットまでに治療の機会を逃すと、そこからの回復が難しく、成人後まで影響することになるという。
 ▽機器開発が契機
 視力検査は以前から3歳児健診の標準項目として入っていた。しかし、遠視や乱視、見え方の左右差、斜視などが分かる屈折検査は、以前は大がかりな装置と検査する人の技量、患者の協力も必要で、幼児の健診に用いるのは難しかった。
 このため、実際の3歳児健診では主に家庭で保護者が視力検査をして異常があれば申告してもらい、問診と組み合わせる方法を取った。ただ、このやり方ではどうしても弱視を見落とす割合が高かったという。

子どもの目の屈折検査=現場を再現(日本眼科医会提供)
子どもの目の屈折検査=現場を再現(日本眼科医会提供)

 

 状況が変わったのは、手で持てるサイズの屈折検査機器が開発されたことだ。子どもが短時間、機器の方を向いてくれるだけでデータが取得できる上、異常を自動判定する機器も登場して、健診のような多くの検査をこなすことが可能になった。
 同医会が今年公表した「3歳児健診における視覚検査マニュアル」によると、現場ではまず初めに幼児全員に屈折検査を受けてもらい、次いで問診票の確認、視力検査結果の確認などを経て、一つでも異常に該当すれば医師が診察して、必要に応じて眼科医による精密検査を勧める。子どもが検査を受けようとしないなどの理由で結果が得られないケースにも目の病気が隠れている恐れがあり、注意が必要だとしている。
 ▽国も予算化
 実際に3歳児健診に導入した自治体では、より多くの弱視の子どもを見つけだすことができたとする有効性の報告が相次いでいる。
 松江市では、弱視やほかの目の異常で精密検査が必要とされた子どもの割合が導入前の1・0%から7・7%に、目の病気が見つかった割合も0・6%から5・1%に増加し、見落としが減ったことが示された。群馬県でも、弱視の治療が必要だとされた子どもの割合が導入前の0・1%から2・3%に増加したという。
 ただし、屈折検査の普及をさらに促すためには、より多くの子どもを検査して、長期的に弱視の子どもが減る効果を確かめる必要がある。
 厚生労働省は、自治体が屈折検査機器を購入した際の費用を半額補助することを来年度予算の概算要求に盛り込み、普及を加速化する方針だ。(共同=由藤庸二郎)

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