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医療新世紀

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成人診療科へ橋渡し支援 ダウン症児の医療で手引 専門家らが作成、公開

2021.10.5 0:00
 ダウン症の子どもが、成人して小児科を離れた後も適切な医療を受けられるよう支援するため、専門家のチームが、医療関係者向けの手引「ダウン症候群のある患者の移行医療支援ガイド」をまとめた。日本ダウン症学会ホームページに掲載し、成人の診療科への円滑な橋渡しに役立ててほしいとしている。
手引作成の中心的役割を担った東京都立北療育医療センター内科医長の竹内千仙さん=東京都北区
手引作成の中心的役割を担った東京都立北療育医療センター内科医長の竹内千仙さん=東京都北区

 

 ▽延びた寿命
 ダウン症は、計23対ある染色体のうち21番目が通常より1本多いために起こる生まれつきの染色体異常で、500人に1人の割合で生まれるとされる。発達がゆっくりで先天性心疾患を伴うことが多く、かつては短命だったが、医療技術の進歩により平均寿命は60歳を超えるようになった。現在、ダウン症の人は国内に8万人程度いると推定されている。
 成人後もさまざまな疾患を抱える可能性があるため継続的な健康管理が必要とされるが、成長に伴って受診機会が減り、医療機関との関係が切れてしまう人が多い。一方、成人してから新たな受診先を探そうとしても「ダウン症は専門ではないので…」などと敬遠されてしまうケースも珍しくないという。
 ▽医療の空白
 中心になって手引をまとめた東京都立北療育医療センター内科医長の竹内千仙さんは「医療の空白に多くの人が落ちてしまっているのではないか、との危機感がありました」と話す。
 専門家が集まり2019年に発足した日本ダウン症学会で、竹内さんらは20年、移行医療に関する検討チームを設置。米国や英国、オーストラリアなどの指針を参考に、日本の実情を踏まえて内容を詰めていった。
 完成した手引はA4判19ページ。主な合併症の管理が落ち着いた後、12歳ごろから小児科で移行に向けた支援を開始するのが望ましいとした。
 
 

その後は年齢に応じて段階的に、成人後に予想される合併症や、本人が希望する将来の生活設計に関して話し合い、具体的にどの医療機関が移行先の候補になるかなどについて検討を進めるよう提言した。その上で「20代のうちには成人診療科へ移行することが望ましい」としている。

 また、注意すべき合併症は年齢によって変わることから「18歳まで」「19~40歳」「41歳以上」のそれぞれの時期で受けるとよい検査や受診の頻度、診療上の注意点を整理した。肥満症や白内障といった、成人後に出ることが多い合併症も例示した。
 ▽当たり前に
 竹内さんの専門は脳神経内科。約10年前、東京女子医大病院から障害者医療に重点を置く現在の病院へ移り、ダウン症のある成人患者を初めて診るようになった。
 当初はダウン症について詳しく知らず、国内で得られる情報も限られていたため、海外の文献を調べながら手探りで診療を行った。
 出会った患者の何人もが、医師から診察を断られた経験を持っており、そんな状況を少しでも改善したい、との願いを手引に託したという。
 「ダウン症のある人が、社会の一員として暮らす地域で当たり前に医療を受けられるよう、今後も取り組みを続けたい」と竹内さんは話す。
 日本ダウン症学会理事長で小児科医の玉井浩さんは「ダウン症のある人を対象にした成人期の適切な診療指針が国内にはこれまでなく、重要な一歩だ。成人期の医療を支援する体制構築の動きがあることは、現在と将来にダウン症児を育てる人たちの安心材料になるのではないか」と話している。(共同=岩切希)

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