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医療新世紀

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コロナ薬、早期投与が鍵 バーチャル治験で解明 少ない被験者で可能

2021.9.10 0:00
 新型コロナウイルスの治療薬候補に効果があるかどうかを臨床試験(治験)で確かめるには、発症から間もないタイミングでの投与が鍵になるとする研究結果を、名古屋大の岩見真吾教授らのチームがまとめた。米インディアナ大の江島啓介助教らと開発した「バーチャル(仮想)治験」のシステムを使い、早期投与なら数百人と少ない被験者数で実施できることを確認した。従来のコロナ薬の治験では投与時期が遅すぎて薬の効果が見えなくなっているケースもありそうだ。
 ▽分かれる評価
 岩見さんは「人によって大きく異なる体内のウイルス増殖の度合いが薬の治験を難しくしている」と指摘する。
新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」(ロイター=共同)
新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」(ロイター=共同)

 米国で初期に使用許可されたのが抗ウイルス薬の「レムデシビル」。エボラ出血熱の薬として開発され、細胞内でウイルスが増殖するのを抑える働きがある。日本でも特例承認されて医療現場で使われている。

 ただ治験結果の評価は分かれる。米国立衛生研究所(NIH)などは入院患者の回復を早める効果があると報告。これに対し世界保健機関(WHO)は、死亡率を減らす効果はみられないとして使用を推奨していない。
 日本の富士フイルムによる「アビガン」も抗ウイルス薬。国産薬として期待されたが効果が確認できず、同社はさらに治験を続けている。ウイルス増殖を抑える特効薬の開発は難航している。
 ▽3タイプ
 「薬を投与するタイミングが鍵を握っているのではないか」。こう考えた岩見さんらは、感染者の体内で起きるウイルス量の変化に着目した。
 江島さんや名古屋大の岩波翔也助教、九州大の研究者らと共同で、欧州やアジアの研究者が実施した患者30人のPCR検査データを分析。すると発症から1週間で体内からウイルスが消えてしまう人がいる一方、2週間で消える人、1カ月たってもウイルスが残る人など大きく3タイプに分かれることが判明した。
 
 

 感染した細胞がなかなか死なずにウイルスを排出し続ける体質の人がいるらしい。個人の免疫応答の違いが影響していそうだ。

 さらにチームはモデル化した患者を使って抗ウイルス薬の治験をシミュレーションした。ウイルス増殖を99%抑える極めて高い効果の薬があると想定。これを発症から5日後に投与する場合、効果を統計的に確かめるには1万人以上の被験者が必要との結果が出た。感染者が少ない日本では非現実的な数字だ。
 ▽見えない効果
 体内のウイルス量は発症2~3日後がピークとなるため、5日後の投与では効果がほとんど期待できない。岩見さんは「いくら有効な薬であっても投与が遅いと効果が見えにくくなる。その分多くの被験者が必要になる」と説明する。
 一方、発症から半日後に投与する場合は薬の効果が期待できるため被験者は500人ほどで十分だった。これなら日本でも実施可能だ。この研究成果は既に、国内の医師主導治験をどのように実施するかを決める際に使われている。
 実際のコロナ患者は無症状が多く、症状の重さも人によって異なる。薬を早期投与するには症状の変化を捉えて医療スタッフが素早く対応することが必要だ。
 岩見さんらはコロナ後に必ずやってくる次のパンデミックも見据える。あらかじめバーチャル治験の土台となるシステムを用意しておき、患者データが集まってきたらウイルス量の変化などを解析してモデル化する。「数理科学と疫学、臨床医学を組み合わせた新たな手法で世界の人々の健康に貢献したい」と語る。(共同=吉村敬介)

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