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医療新世紀

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うつ病を脳活動で見分ける 診断支援システム開発 将来は治療に応用も

2021.8.17 0:00
 人によってさまざまな症状があるうつ病を、脳活動の状態から正しく診断するよう支援するシステムを、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)の川人光男・脳情報通信総合研究所長らが開発した。機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で記録した1200人以上のデータを使い、うつ病の人に特徴的な脳活動パターンを特定。2021年度中に国に医療機器プログラムとして承認申請する。川人さんは「5年後に医療現場への普及を目指す。将来は幅広い精神疾患の治療にも役立ちそうだ」と話す。
fMRIで脳活動を調べる様子(ATR提供)
fMRIで脳活動を調べる様子(ATR提供)

 ▽一致は3割

 国内の精神疾患の患者数は増加傾向にある。うつ病などの気分障害や統合失調症、ストレス障害を中心に350万人。生活の質の低下を含む健康損失は、30年に全疾患で1位になると予想される。長期にわたる新型コロナウイルス流行の影響も心配だ。
 一方、精神疾患は患者によって症状が異なることが多い。別の疾患でも似た症状が重なり合っており、経験を積んだ精神科医でも診断が難しいことがある。うつ病患者を複数の医師が診断した結果が一致するのは3割程度と他の病気に比べて低い。
 こうした状況から、米国立衛生研究所(NIH)は精神疾患の生物学的な手掛かりを見つける研究を始めている。
 ▽脳回路マーカー
 日本では08年ごろから国を挙げた研究プロジェクトが始まった。ここ数年は川人さんら神経科学者や精神科医、人工知能(AI)の専門家が協力し、精神疾患の診断や治療につながる新たな手法を探ってきた。
 川人さんらは脳活動を高精細なリアルタイム画像で捉えることができるfMRIを利用。健康な人とうつ病の人の平常時の脳活動を記録したデータを1200人以上集めた。東京大や昭和大、京都大、広島大、山口大に加え、各地の病院が協力した。
 かつては記憶や言語など特定の脳活動領域を調べる手法が主流だった。これに対し、川人さんらは脳を約380の小さな領域に分け、それを1対1でつなぐ数万通りの「脳回路」が活性化するパターンを網羅的に調べる手法を使った。
 膨大なデータをAIを使って解析すると、うつ病の人で弱くなったり、強くなったりしている複数の脳回路が浮かび上がった。この「脳回路マーカー」を使うと、患者を約70%の確率で正しく見分けることができるのを確かめた。
 
 

 

 ▽フィードバック
 日本は他の先進国に比べてfMRIを使える医療機関が多い。川人さんは「将来は患者の脳画像をネット経由で分析し、精神科医による正確な診断を補助することが可能になる」とみている。
 統合失調症やストレス障害のマーカーも開発中。「いずれは薬や認知療法が効く人と効かない人を見分けることもできるようになる」と川人さん。実用化と普及に向けたベンチャー企業「XNef」も設立した。
 診断の先にある「治療」の可能性も見えてきた。自分の脳活動の状態をグラフィック化した画面を見ながら、ゲームのように念じながら画面を操作すると、脳の活動パターンを変えられることが分かってきたのだ。
 「ニューロフィードバック」と呼ばれるこの手法を使い、川人さんらはうつ病や統合失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など幅広い心の病の治療を目指している。
 PTSD治療の臨床研究を担当するATRの千葉俊周研究員は「精神疾患のメカニズムには謎が多い。研究を手掛かりに脳の理解が大きく進むはずだ」と話す。(共同=吉村敬介)

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