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医療新世紀

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在宅療養者を「遠隔看護」 離れていても見守り 聖路加大チームが開発

2021.2.9 0:00
 病院で治療を受けて退院し、自宅で療養中に症状が悪化する人は少なくない。兆候となる体調の変化に自分では気づきにくいためだ。聖路加国際大の亀井智子教授(老年看護学)のチームは、操作が簡単なタブレット端末を使い、在宅療養者の体調をモニタリングして看護を提供する「テレナーシング(遠隔看護)」のシステムを開発した。
 実際の患者を対象にした臨床研究で、変化をいち早く察知して支援し病気の悪化を防ぐ効果を確認。「利用者からは『離れていても見守られている気がして安心』と好評だ」と亀井さんは話す。
在宅療養者の「テレナーシング(遠隔看護)」に使うタブレット端末
在宅療養者の「テレナーシング(遠隔看護)」に使うタブレット端末

 ▽無線で測定データ

 東京都内に住む60代後半の男性は、肺の機能が低下する慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院後、遠隔看護による在宅療養を始めた。自宅に無線通信環境を整備し、タブレットと連携する体重計や血圧計、血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターなどを使用。自動的に無線で測定データを送る仕組みだ。
 タッチ式のタブレットには操作がひと目で分かるアプリを搭載。1日1回、項目ごとに順を追って問診に答えてもらう。食欲がどの程度あるか、体が動きにくい状態ではないか、手足のむくみの有無などを記録する。
 データは聖路加国際大にある看護モニターセンターに送られ、看護師がチェック。気になる項目があればビデオ通話や電話で確かめる。医師と情報共有し、薬の処方や再入院などが必要かどうかを検討する。
 
 
 

 ▽心疾患も発見

 亀井さんらは2009~18年、COPDや糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者43人で遠隔看護の効果の有無を3カ月間確かめた。ALSは進行すると自発呼吸ができなくなるため病状チェックが欠かせない。
 1~2割の患者が再入院を余儀なくされたが、早めに兆候を捉えて医師と連携できた。全体として病状の悪化を防ぎ、生活の質を高く保つ効果がみられた。
 思わぬ発見もあった。ある日、糖尿病で腎不全になった男性患者の脈拍と血圧データに異常が見つかった。未診断の心疾患があることが分かり、急きょ入院してペースメーカーを装着。男性の症状は改善した。亀井さんは「遠隔看護によって重症になる手前で対面治療につなぐことができた」と話す。
 人それぞれの在宅環境で複数の機器をうまく連携させる必要があるため技術的な課題は残る。聖路加国際病院など複数の病院と遠隔看護システムの普及に向けた共同研究を進めている。
 ▽第3の看護
 亀井さんは「ナイチンゲールが確立した近代看護学はこれまでに多くの患者の健康回復を支援してきた。遠隔看護はその延長線上にある『第3の看護』だ」と語る。
 入院期間をできるだけ短くして在宅医療を推進するのが現在の国の方針。膨らみ続ける医療費に加え、住み慣れたわが家での療養を望む主に高齢患者の声が背景にある。
 「病院など臨床現場での『第1の看護』から、療養者宅を訪問する『第2の看護』の必要性が高まった。それでもCOPDの安定期には月1~2回しか訪問できない」と亀井さん。「遠隔看護は訪問看護の“隙間”を埋める。『臨床』と『訪問』『遠隔』を組み合わせることで、患者に寄り添いニーズに合った切れ目のない看護が可能になる」と話す。
 新型コロナウイルスの流行で医療現場が逼迫する中、遠隔看護が新たな役割を果たす可能性もある。「うまく使えば対面診療や通院に伴う感染リスクを抑えられる。急に重症化することがある新型コロナの在宅療養にも応用できそうだ」と亀井さんは語る。(共同=吉村敬介)

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