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医療新世紀

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お薬、残していませんか? 不経済で治療にも支障 まずは薬剤師に相談を

2021.1.25 0:00
 「医療機関で処方された薬を家に残していませんか」と問われて、心当たりのない人はめったにいない。自分が飲み忘れたのがいけないと思い、病院や薬局で言い出すのは気が引ける。だが、残薬は医療費の無駄になるだけでなく、医師の治療の選択にも影響を及ぼしかねない。そんな現状に「では、どうすれば飲めるのか一緒に考えましょう」とかかりつけ薬剤師が相談に乗る「節薬バッグ運動」が全国に広がりを見せている。
配布した節薬バッグを持つ福岡市薬剤師会の木原太郎副会長(同会提供)
配布した節薬バッグを持つ福岡市薬剤師会の木原太郎副会長(同会提供)

 

 ▽年3300億円
 福岡市薬剤師会は2012年、九州大薬学研究院の島添隆雄准教授(臨床薬学)と協力して運動を始めた。同薬剤師会の木原太郎副会長によると、まず会員の31薬局でスタートし、後に約700薬局に拡大した。
 処方箋を持ってきた人に薬を渡す際、特製の手提げのバッグを配り「次回、薬が残っていたらこのバッグで持ってきて」と呼び掛けた。残薬は使用期限や保管状態を確かめ、主治医に確認の上で飲める分だけ新たな処方を減らすことができる。
 3カ月間の試行の結果、31薬局で節約できた薬剤費は計約70万円。これを全国の1年間に当てはめると、3300億円に相当する金額だった。
 島添さんらはこれを福岡市の周辺自治体や大分市、東京都墨田区の薬剤師会に拡大。どういった種類の薬を飲み忘れるのかや、どのような働きかけがきちんと飲むきっかけになるかを詳しく調べたところ、高血圧や高血糖、脂質異常などの生活習慣病の薬で特に飲み残しが多いことが判明した。
 ▽忘れるタイミング
 島添さんは「飲んですぐに薬効を自覚できないと飲み忘れやすい。血圧や血糖は自宅で測れるのでまだ実感しやすいが、高脂血の改善は自身では分からない」と話す。
 
 

 


 飲むタイミングも残薬に影響していた。朝に比べて晩の薬の方が、朝晩に比べて昼の方が飲み忘れが多かった。食後よりも食前や食間の飲み忘れも目立ったという。「決まった時間、場所で取ることが少ない昼食時は忘れやすいのではないか」と島添さんは指摘する。
 では、飲み忘れにどんな影響があるのか。
 もちろん、まだ飲める残薬を改めて飲んでもらえば、患者自身の負担軽減や、医療費全体の節約にもなる。何よりもきちんと服薬すれば治療にも良い影響があるという。
 福岡市薬剤師会の木原さんは、残薬を持ってきた患者には、家に残った薬がいったんなくなる「リセット効果」があると話す。「薬を飲む意味や飲み方について意識的になり、服薬の意識が高まる。きちんと飲む、それを守るだけで血圧や血糖などの数値が改善したケースも多かった」と、その効果を強調する。
 ▽薬の変更も
 患者とのやりとりで飲めないタイミングや原因が分かれば、主治医と連絡を取って、処方自体を変えることもある。
 可能であれば、例えば「同じ効き目で1日3回でなく2回、2回でなく1回の薬に変える」「食前、食間から食後服用に変える」「飲むタイミングごとに薬を一包みにする」などが検討される。複数の薬で飲み合わせの悪いものがあったり、別の医療機関から同じ薬が出ていたりしている場合もある。飲み忘れの原因を探るうちに認知症が判明したケースもあった。
 「節薬バッグ」はそのきっかけになる。福岡市での配布は既に終了したが、残薬は薬袋のまま持参しても構わない。
 島添さんは地域や薬局ごとに取り組みに濃淡があることを指摘する。「国もこうした薬剤師の指導に保険点数を付けて普及を促している。患者の治療にチーム医療の一員として関わる薬剤師のやりがいを持って取り組んでほしい」と話した。(共同=由藤庸二郎)

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