スマホに光と影の両面 近視、難聴には要注意 障害補助の有用なツール

▽耳を休める
聖マリアンナ医大耳鼻咽喉科の小森学講師は、騒音が聴覚に与える影響について注意喚起した。
小森さんによると、聴覚に悪影響があるのは80~85デシベルより大きな音。スマホの音量を制限する国もあるが、日本の機種は100~105デシベルの出力が可能で、これは、車のクラクションを間近で聴くほどの音量になる。
小森さんは「悪影響を防ぐためにはイヤホン使用を1日1時間にとどめ、使用後は耳を休めるように心掛けるとよい。十分な睡眠や、日常の騒音を耳栓などで避けることも大切だ」と話した。外の音をシャットアウトする機能があるヘッドホンも有用だという。
視力への影響に関しては東京医科歯科大眼科の大野京子教授が登壇。
小児の近視が世界的に急増し、日本でもここ30年で約3倍に増えたとのデータを紹介。「小さな画面を間近で見つめるスマホは人の目が経験したことのない強い刺激になる」と注意を促した。
近視だけでなく、寝転んで見てピントが左右でずれたり、画面が近すぎて目が寄ったりして斜視の危険性も高まる。
大野さんは「スマホを頻繁に使う人は、使用時間を過小評価しているとのデータもある。小児では、保護者が利用時間をきちんと管理し、外遊びの時間を確保するようにしてほしい」と話した。
▽環境整備を
京都大耳鼻咽喉科・頭頸部外科の山本典生准教授は、新型コロナウイルス感染症の流行でマスクの装着が増え、口元が見えないことで聴覚障害者の6割が不便を感じているとの調査結果を基に、聴覚を補助するスマホの可能性に言及した。
山本さんは、スマホの普及と人工知能(AI)の進歩により、音声を文字に変換する機能が高度化できるとして、技術開発の一層の強化を提言。
諸外国の建物や交通機関では、スピーカーではなく電磁誘導の仕組みを使って、磁気コイル付きの補聴器や人工内耳に雑音のない音を伝える「磁気ループシステム」の導入が進んでいるとして、日本でも普及を早めるよう訴えた。
視覚障害者の社会参加の支援、情報支援を進めている公益社団法人「NEXT VISION(ネクストビジョン)」の理事で眼科医の三宅琢さんは、文字の拡大や読み上げ、明るく大きな撮影などスマホに実装されているツールの有用性を解説。色覚障害の色の見え方を画面で再現し、障害がない人との共通理解を深める機能など多様なアプリが開発されていることを紹介した。

▽つながり広げる
また、音声入力と日本語変換の進歩の実例として動画を再生。声で指示するだけでアラーム設定や天気の確認、メッセージ送信、日程管理、飲食店を探して道順を調べる―などがわずか3分で可能なことを示した。
三宅さんは「スマホは、視覚障害者の『移動と情報アクセスの困難』を解消し、人とのつながりを広げるツールになり得る」と強調した。
障害者の生活を補助する新しい支援アプリについては、東京都障害者IT地域支援センターの「やくだち情報」のページに掲載されている。(共同=由藤庸二郎)