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医療新世紀

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結核、低まん延国への課題 県単位で専用病床維持を 加藤誠也所長に聞く

2020.9.4 18:56
 日本政府は1年間に新たに結核と診断される人について、2020年までに人口10万人当たりの罹患(りかん)率を10人以下に減らして「低まん延国」にするとの目標を掲げていた。今年は難しくても数年内には達成される可能性が高い。その後の低まん延の状況でさらに必要な対策は何か。結核予防会結核研究所の加藤誠也所長に聞いた。
加藤誠也結核研究所所長
加藤誠也結核研究所所長

 


 ▽コロナの影響
 ―目標達成見通しは。
 2000~05年は平均で前年比6・4%と急激に減らすことができたが、その後の10年間は同4%余りと鈍り、18年の罹患率は12・3人。目標達成は厳しい見通しだ。
 ―新型コロナウイルス感染症の影響はあるか。
 感染者から接触者をたどって検査を受けてもらうルートでの患者発見が今年1~4月に4割も減った。新型コロナ対応に追われて保健所による接触者の追跡調査が手薄になり、患者発見が遅れている恐れがある。結果として患者報告数が減ったとしても喜べない事態だ。
 ―今の患者の状況は。
 年齢別では、日本人で高齢者の割合が高いが、65~79歳の感染者数は急激に減っている。
 一方で、若い世代では外国で生まれて来日した人が、患者の数でも全体に占める割合でも増加している。これは、早くに低まん延国を実現した欧州諸国と同じ傾向だ。18年のデータでは、日本出生者の患者は70歳以上が3分の2を占めるのに対し、外国出生者では6割近くが30歳未満と若い世代が目立った。
 ▽外国出生者
 ―外国出生者の感染ルートの特徴は。
 日本語学校における集団感染が14~18年の5年間で12件発生している。また、農林水産業や製造業に従事する技能実習生の間でも発生があり、都市ばかりでなく地方の問題にもなっている。一般的な薬が効きにくい薬剤耐性結核は、日本人では多くはないが、今後、外国出生者の持ち込みには注意が必要だ。
 
 

 

 ―国は水際対策を打ち出している。
 入国前に検査(スクリーニング)を受けてもらう制度が始まる。フィリピン、中国、ベトナムなど、日本で発見された患者数の上位6カ国から来る人が対象。90日を超える中長期在留の査証(ビザ)を発給する条件として、日本政府が指定した機関で検査を受け「結核にかかっていない」、または「結核が治った」との証明が必要になる。
 入国後の検診も大切だ。児童生徒なら入学、転入時にエックス線検査を実施し、職場では雇用時に健診する必要がある。結核は症状が治まっても治癒するまでに長期間服薬が求められる。そうした知識を持ってもらうため外国語の啓発資料や翻訳ツールなどの開発も進んでおり、活用を呼び掛けたい。
 ―患者が減ったことは対策に影響するか。
 臨床現場で結核を診たことがない医療従事者が増えると予想される。また、各地で結核病床の維持が難しくなっている。罹患率は地域によって大差があるが、どの地域であっても、患者が行きやすい所に一定数の病床を維持するべきだ。合併症のある結核患者を総合的に診られる医療機関も、各県に最低で1カ所はほしい。医療機関の経営状態は厳しく、ベッドを空けておくためには財政上の手当ても必要だろう。
 ―今後、日本の結核対策はどうあるべきか。
 先進的な欧州諸国では、30年までに罹患率1以下という野心的な目標を掲げている。結核は依然として世界で毎年約1千万人が罹患し、約145万人が死亡する最大の感染症だ。低まん延国になったからといって決して手を緩めるべきではない。(共同=由藤庸二郎)

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