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医療新世紀

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薬やワクチン開発のヒント 免疫から考えるコロナ 宮坂昌之大阪大名誉教授

2020.9.4 18:46
 感染拡大が続く新型コロナウイルスに対し、体内ではどんな反応が起こっているのだろうか。免疫学者の宮坂昌之(みやさか・まさゆき)大阪大名誉教授は「免疫の仕組みを知ることがより良い薬やワクチンの開発につながる」と話す。免疫とコロナについて聞いた。
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 


 ▽二段構え
 私たちの体には外から入ってくる病原体に対抗する二段構えのバリアーがあります。数分から数時間で起こり、食細胞が敵を食べる自然免疫と、突破されると数日後から働きだす獲得免疫です。
 獲得免疫ではヘルパーT細胞が司令塔となり、B細胞に働き掛けて、病原体に対抗する抗体が作られます。感染した細胞を攻撃するキラーT細胞もある。獲得免疫は一度会った敵を覚えるので、2回目の感染では素早く立ち上がります。
 抗体ができれば良いわけではありません。抗体にはウイルスを殺せるような優等生、症状を悪化させる劣等生、役に立たない抗体もある。優等生は「中和抗体」と呼ばれ、ウイルスなどに結合し、細胞に侵入するのを防ぎます。できる抗体の種類には個人差もあり、病原体によっては優等生が増えにくいものもあります。ワクチンを打った時に劣等生が増えると体調が悪くなることもある。抗体は量より質を重視すべきです。
 ▽交差免疫
 抗体の働きだけでは新型コロナの免疫は説明できません。自然免疫やT細胞も考慮すべきです。
 
 

 

 食細胞は敵に会うとサイトカインという物質を出して自然免疫を活性化します。新型コロナはこの過程を妨げることが分かってきました。獲得免疫が働くまでにウイルスが増えてしまいます。
 重症患者は免疫が過剰に働いて自分の臓器を攻撃する「サイトカインストーム」が起きているとされます。一部の人にだけ起きる理由は分かっていません。
 抗体に依存せず、自然免疫やT細胞などの働きでこの感染症から治る人もいるようです。中国では患者と元患者の一部から抗体が検出されなかったとの報告もありました。
 鼻風邪を起こす別のコロナウイルスに感染した経験をT細胞が覚えていて、新型コロナにいち早く対処できる「交差免疫」があるのかもしれないという報告も米国でありました。T細胞が回復の鍵を握っている可能性が高いです。
 抗体があれば再び感染しない“免疫パスポート”という考え方はふさわしくなさそうです。抗体の長期的な効果は期待できず、多くの人が抗体を持つと感染が広がらないとする「集団免疫」説は正しくないでしょう。集団免疫があるとすれば自然免疫やT細胞の関与も考えられます。
 ▽ワクチンと治療薬
 結核予防のBCG接種が効くと話題になっていましたが、自然免疫やT細胞などが刺激された可能性があります。子どもが重症化しにくいのは注射の機会が多いことが理由かもしれません。
 ワクチン開発では、抗体を作るB細胞だけでなく、T細胞を強く刺激できるものを目指すべきです。副作用を防ぐため、作られる抗体は優等生に絞った方が良い。1、2年で有用な物ができるとは思えず、早くできたものが良いとも限りません。
 一方、薬の開発は期待できます。回復した患者の優等生の抗体だけを取り出して薬にすることが実現されればウイルス量を減らせるでしょう。
 また、「モノクローナル抗体」という人工的な抗体を治療に使う取り組みもあります。重症化を抑える新しい薬として有効かもしれません。ただ予防薬としては使えないと思います。ワクチンでも薬でもこの感染症を予防するのは当面は難しそうです。(聞き手・共同=村川実由紀)

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