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医療新世紀

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どう生かす食事摂取基準 フレイル予防盛り込む 5年ぶり改定のポイント

2020.3.10 0:00
 誰もが知っている健康の基本はバランスの良い食事と適度な運動だ。だが、何をどれだけ食べればいいのかについて国が明確な基準を定めていることはあまり知られていない。その「日本人の食事摂取基準」が5年ぶりに改定され、4月から適用される。高齢化社会に対応する虚弱(フレイル)予防への対応を盛り込んだのがポイント。基準をどう生かしたらいいのかについて関係者に聞いた。
 
 

 ▽給食や病院食に

 厚生労働省の清野富久江栄養指導室長によると、基準は1969年から「日本人の栄養所要量」として公表され、現在の名称になったのは2005年版から。健康増進法に基づき、日本人が取るべきエネルギー(カロリー)と、34種類の栄養素の量を科学的な根拠に基づいて定めている。

 政策決定に活用されるほか、学校給食や病院食など多数に食事を提供する施設や、市町村や医療施設などの「栄養指導」の現場で管理栄養士や保健師らが参考にしている。
 清野さんは「改定ごとに新しい研究成果を盛り込んでいる。一般の方にも込められたメッセージを読み取ってもらえたら」と話す。
 ▽減塩を促す
 策定検討会ワーキンググループの座長を務めた佐々木敏東京大教授(栄養疫学)によると、高齢者、小児、日本人全体でそれぞれ知っておくべき変更点がある。
 高齢者では他の政策と同様、65~74歳と75歳以上に区分され、フレイル予防が強調された。
 摂取エネルギーに占めるタンパク質の割合を高め、具体的には、65歳以上の目標量の下限は摂取エネルギーの13%から15%に引き上げた。佐々木さんは「タンパク質は食べないと不足しやすい。できるだけ一定量ずつ食べるのが大切だ」と話す。
 日本人の食生活で最大の問題とされる塩の取り過ぎについては、1日当たりの食塩を0・5グラム引き下げ、成人男性は7・5グラム未満、同女性は6・5グラム未満、高血圧や腎臓病の悪化を防ぐために6グラム未満に抑えることとし、減塩を促した。
 生活習慣病を予防するため飽和脂肪酸の摂取についても小児で新たに基準を設定。成人では、脂質をエネルギーの2~3割にすることとした。
 脂質は種類によって体への影響に違いがあるが、佐々木さんによると、この範囲で摂取すれば必要な脂質は不足せず、不要な脂質を取り過ぎることも避けられるという。
 
 

 

 ▽深刻な研究不足
 ただ、今回の改定でも、根拠となる研究成果が不足し、数値目標の設定が見送られた項目も多い。なぜなのか。
 策定検討会報告書は、研究者の数とその質がこの基準の策定に求められる能力に対応できておらず、近い将来に策定に支障を来すおそれがあると指摘し、研究者の育成が急務だとした。
 「日本人、日本食についての研究が圧倒的に不足している」と佐々木さんは言う。「どんな栄養素をどれだけ取っているかまだまだ分からないことがあるが、調べるのはとても難しい」からだ。
 例えば食塩。多くの研究は、対象者に食事を自己申告してもらって推計する。しかし、食事摂取基準で厳密に量を定める根拠としては不十分。真の摂取量は、対象者に24時間分の尿をためてもらって測る必要があり、人手も手間も、研究費も掛かる。ミネラルなどの微量元素はなおさら難しい。
 米国の論文データベースでは、健康に良いと一時ブームになった「地中海食」についての論文は約3400本見つかるが、日本食の論文は約110本という。「日本食は健康に良いという定説さえ、実は根拠が不確かです」と佐々木さんは話している。(共同=由藤庸二郎)

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