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医療新世紀

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慌てなくていい黄斑前膜 見え方のゆがみに要注意 治療時期、よく相談を

2020.2.25 0:00
 画像検査の進歩によって病気が見つかりやすくなることがよくある。高齢者に多く見つかる目の病気「黄斑前膜(おうはんぜんまく)」もその一つだ。光が像を結ぶ網膜の表面に膜が張って、悪化すると物がゆがんで見えたり、一部だけ大きく見えたりする。手術で膜を取り除く治療法があるが、専門家は、ほとんどの患者は進行が遅いため慌てず、主治医とよく相談して治療のタイミングを見極めるよう勧めている。
 
 
 

 


 ▽装置の進歩
 黄斑前膜は、網膜前膜ともいう。網膜の内部に異常な新血管ができて失明の原因にもなる「加齢黄斑変性」とは全く違う病気だ。日本人についての詳細な調査研究はないものの、日本眼科医会のウェブサイトなどでは「40歳以上の20人に1人」が該当するとも指摘されている。男性より女性の方が発症率が高いことも知られている。
 東京女子医大の飯田知弘教授(眼科)は「この病気と診断される人が増えたのは『光干渉断層計(OCT)』検査が普及したためだ」と話す。
 OCTは、近赤外光を使って断層撮影し、眼底を立体的、詳細に写す装置。物のゆがみなどの見えづらさを訴えて受診した患者にこの検査をすることにより、眼底を正面から撮影する従来の方法では見えなかった前膜がはっきり捉えられ、診断に結び付くという。
 ▽細胞が取り付く
 OCT検査が普及したのは2000年代と比較的最近であり、日本人の発症率、有病率が実際はどのぐらいなのか、今後の調査、研究が待たれている。
 では、なぜ網膜に無用、有害な膜が張るのか。
 飯田さんによると、人の眼球内は硝子体(しょうしたい)というゼリー状のもので満たされている。幼児期まではこれが眼球内全体を満たしているが、年を経るほどにゼリーは徐々に液体に変わり、その結果、硝子体の一部が剝がれて網膜側に残ってしまう。この組織に眼球内の浮遊細胞などが取り付いて、前膜ができるのが主な原因だ。
 取り付いた細胞が増えると膜は縮小し、張り付いている網膜もゆがめられる。このことが見えづらさを生む。「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の線を引いた図を見て、線がゆがんでいるかどうかを調べる検査も発見の手掛かりになる。
 
「光干渉断層計」で捉えた黄斑前膜(矢印部分)。下の層は網膜(飯田教授提供)
「光干渉断層計」で捉えた黄斑前膜(矢印部分)。下の層は網膜(飯田教授提供)
 ▽手術で除去
 診断されたからすぐに手術と考える必要はないそうだ。
 ほとんどの黄斑前膜は進行がごくゆっくりで、よく考えてから治療を選択する余裕がある。飯田さんは、まずは主治医とよく相談するよう勧める。
 「多少のゆがみなら生活に支障がない場合もあるし、逆に、仕事や趣味で細かく見ることが欠かせない場合もある。その後の暮らしで何がしたいのか、それには現状の見え方が十分なのか。それを熟慮してほしい」
 いったん網膜にゆがみが出ると、手術をしても完全に元通りにはなりにくい。その点も、手術のタイミングを慎重に考えるべきポイントだという。
 この病気の治療は、手術で前膜を取り除くこと。白目の部分に小さな穴をあけ、そこから微小なピンセットを入れて、顕微鏡を見ながら膜を引き剝がす。手術映像を見ると、壁から古いクモの巣を剝がすようにも見える。日帰りや短期間の入院で手術は可能だが「進行が早い黄斑前膜もあることには注意してほしい」と飯田さん。
 いろいろな目の病気で手術を受けた後、あるいは、知らず知らずに目の病気をしていたときなどに、前膜が成長するのが早まる恐れがある。黄斑前膜と診断を受けたら、その後は定期的に受診して経過をみることが大切だ。(共同=由藤庸二郎)

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