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医療新世紀

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脳磁図検査に財政難の壁 実施施設の減少続く てんかん診断で有用性

2020.2.21 20:01
 てんかんの診断などで極めて高い有用性がありながら、実施施設の減少が続く脳の検査方法がある。脳が発生する微弱な磁場を計測して、活動部位をミリ単位の精度で突き止める「脳磁図検査」だ。装置の高額な維持費などが重くのしかかり、多くの医療機関が財政難に苦しむ。日本てんかん学会や日本脳神経外科学会など関連学会は、国に診療報酬引き上げの要望を続けている。
脳磁計のセンサー部分に頭を入れて磁場を計測する脳磁図検査=仙台市
脳磁計のセンサー部分に頭を入れて磁場を計測する脳磁図検査=仙台市

 


 ▽発生源特定
 一昨年、東北地方の病院からの紹介で、中学2年の男の子が東北大病院てんかん科を受診した。母親によると、小学校までは明るく元気な子だったが、中学に入るころからぼーっとしている時間が長くなり、学校の成績も低下。母親は当初「いじめに遭っているのでは」と心配したという。
 脳波を調べるとてんかん特有の異常な波が検出された。男の子はけいれん発作を起こしたことはなかったが、主治医の中里信和教授は「けいれんを伴わないてんかん発作が長期間続いている状態」と診断した。
 薬の効きが悪く、将来を考えると早めの手術が望まれた。しかし脳波だけでは脳のどこに異常があるのか分からない。そこで威力を発揮したのが脳磁図検査。意欲や活力に関わる「前頭前野」に異常な電気信号の発生源が見つかった。さらに、この部位が四肢の運動や言語に影響しない領域であり、安全に手術可能なことも確認できた。初診の半年後、問題箇所の切除手術を受けると、男の子は以前の活発さや勉強への意欲を取り戻した。
 ▽高い安全性
 脳内の情報伝達は神経細胞間の電気信号のやりとりで行われる。電気が流れると地磁気の100億分の1という微弱な磁場が発生する。脳磁図は、この磁場の変化を捉えて脳の活動を明らかにする検査で「脳磁計」という装置で計測する。
 脳と頭皮の間には、頭蓋骨や脳脊髄液など導電率(電気の流れやすさ)の異なる組織がある。このため電気信号そのものを計測する脳波では活動部位を正確につかむことが難しい。一方、磁場は導電率の影響を受けないため、脳磁図はミリ単位で位置を特定できる。
 検査は外部の電気や磁気を遮断したシールドルームで行う。寝た状態か座った状態でヘルメット形のセンサー部分に頭をすっぽり入れ、30分~1時間計測する。放射線を当てたり薬を注射したりすることはない。安全性が最大の特長だ。
シールドルームに隣接する部屋でモニターに映し出される脳磁図や患者の様子をチェックする
シールドルームに隣接する部屋でモニターに映し出される脳磁図や患者の様子をチェックする

 


 てんかんの検査では、磁気共鳴画像装置(MRI)など他の検査方法で見つからない異常が脳磁図で検出されるケースもあり、治療方針の決定に重要な役割を果たす。
 ▽研究費を充当
 中里さんによると、現在、てんかんの検査目的で脳磁図を活用している施設は大学病院を中心に全国約10施設。以前はもっと多かったが、中止や撤退が相次いだ。最大の問題は高額な維持費による財政難だという。
 磁場を測定する装置の“心臓部”は超電導センサー。極低温に冷やすために液体ヘリウムが使われるが、近年その価格が高騰しランニングコストを押し上げている。一方で、診療報酬上の扱いは「治療方針の決定のために行う場合に限り、1患者1回のみ」という条件で5100点(5万1千円)と定められている。
 実施施設の中には、保険診療の枠内では維持費を賄えず、研究費を充当して何とかやりくりしている所もある。
 てんかんの有病率は約1%、国内の患者数は100万人を超える。中里さんは「脳磁図の有用性は明らかだが、現状は装置の減価償却も難しく、施設は減るばかり。大幅な診療報酬の引き上げが必要だ」と訴えている。(共同=赤坂達也)

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