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医療新世紀

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価値観に合う方法選んで 乳がん手術後の乳房再建 利益と不利益十分吟味を

2020.2.21 19:24
 乳がん治療で乳房を取る手術を受けた患者は、人工乳房や患者自身の組織を移植することで再建ができる。喪失感を和らげて、前向きに人生を歩む原動力にもなる。医師は「それぞれの方法の利益と不利益をよく理解して、自分の価値観に合った方法を選んでほしい」と呼び掛けている。
 ▽皮膚を伸ばす
 乳がんの手術では2013年、乳房を全て切除してから人工乳房を植え込む再建法が保険適用された。「温泉に行きたい」「ファッションを楽しみたい」など、年齢にかかわらず好きなことや自分らしさを諦めないで済む可能性が高まった。
器具を示す岩平佳子院長
器具を示す岩平佳子院長

 


 人工乳房で再建するには、乳がん摘出手術の際、皮膚を伸ばす「エキスパンダー(拡張器)」を入れるケースが一般的だ。6~8カ月、定期的に通院して拡張器に少しずつ生理食塩水を注入し、膨らませる。皮膚が十分に伸びたら人工乳房に入れ替える。拡張器を入れたまま長期間放置すると破損する恐れもあるため、注意が必要だ。
 手術直後は胸の感覚がなくなったり、胸が張ったような違和感を覚えたりする患者はいるが、拡張器を膨らませる際に痛みはない。「ブレストサージャリークリニック」(東京)の岩平佳子院長は「きれいな胸をつくる基本は、皮膚を伸ばすことから始まる」と話す。
 皮膚が十分に伸びていないのに人工乳房を入れると、乳房の位置がずれてしまうという。岩平院長は、こうした情報も患者に伝えて治療を進める。
 ▽一生ものではない
 人工乳房による再建は、自家組織の移植に比べて手術時間や入院期間が短いため、仕事や育児などで長期間の入院が難しい人の選択肢になり得る。乳がんの手術でできた痕をもう一度切って人工乳房を入れるため、手術の痕も増えない。
 一方、再建する乳房の大きさや形によっては、反対側の乳房との対称性が希望通りにならない可能性がある。人工乳房の周囲は徐々に硬くなる場合があるため、反対側とのバランスは保てなくなる。破損する恐れもあり、定期的な検診は必須だ。
 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の朝戸裕貴(あさと・ひろたか)理事長は「人工乳房は“一生ものではない”と知ってほしい」と話す。
 拡張器を入れる医療機関と、人工乳房に入れ替える医療機関が異なるケースも多く、乳がんの主治医とあらかじめよく相談することが必要だ。同学会は、ウェブサイトで再建ができる医療機関の一覧を公開している。
 
 

 


 ▽悩み過ぎず
 患者自身のおなかや背中の組織を移植する「自家組織再建」は乳がんの検診や薬の服用が要らなくなれば、長期のアフターケアも不要になる。手触りは人工乳房より自然だ。一方、手術時間や入院期間は長く、手術の痕は増える。それぞれ利益と不利益があり、再建をしない選択も含めると、何が自分に最善なのかと悩む患者は少なくない。
 「医師は患者に正しい情報を伝えつつ、不安に寄り添う必要がある」と三井記念病院(東京)の棚倉健太形成外科科長は話す。「育児を優先したい」「仕事に打ち込みたい」などライフステージによって価値観は変わる。「遠い将来を心配し過ぎるよりも、今の生活に最もふさわしい選択をしてほしい」という。
 過去に人工乳房で再建や豊胸をした人が、まれにリンパ腫になるケースが最近、報告された。乳がんと関連はなく、早期発見すれば完治できる。同学会は、人工乳房の周囲に水がたまったり、腫れたりするなどの症状がない限り、予防的に取り出すべきではないとしている。(共同=山岡文子)

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