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医療新世紀

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難治性うつ?双極性障害かも 治療の目標は気分の安定

2019.9.17 0:00

 うつ病と診断され、長く治療を続けているのに改善しない。そうした人の一部は、双極性障害(そううつ病)かもしれない。うつ病とは別の病気で治療に使われる薬も異なるが、病気の特徴から診断に時間がかかるケースが多い。診断・治療のいずれにも症状の経過を客観的に把握することが重要で、家族や周囲の協力が大切になるという。

 
 

 ▽症状なのに…

 双極性障害は、眠らなくても活動的な躁(そう)状態と、気分が落ち込み何事にも興味が持てないうつ状態を繰り返す気分障害の一種。正確な患者数は不明だが、100人に1人ほどとみられる。

 1型と2型がある。その人らしくない行き過ぎた言動が増え、入院が必要になるほど躁状態が激しく持続期間も長いのが1型、躁ほどではない「軽躁」と呼ばれる症状が出るのが2型とされる。

 

 日本うつ病学会双極性障害委員会の委員長を務める精神科医で理化学研究所チームリーダーの加藤忠史さんは「この病気の診断が難しいのは、躁は病気だという認識が患者にも周囲にもないからだ」と話す。

 躁や軽躁のとき、本人は絶好調なので病気とは考えない。一方周囲は、躁の症状で本人からひどいことを言われたりすると、普段のその人とは明らかに違うのに「実はこんな人格だったのだ」と誤解しがちだという。

 ▽長いうつ状態

 診断の難しさはデータにも表れている。杏林大(東京)の渡辺衡一郎教授(精神神経科学)が2013年、双極性障害の患者457人に実施した調査では、診断までに平均4年、3人に1人は5年以上かかっていた。診断が遅れた理由のトップは「躁の症状を病気と思わず、医師に伝えなかったから」(39%、複数回答)だった。

 また、最初の診断がうつ病(またはうつ状態)だった人は65%で、初めから双極性障害と診断された24%を上回った。これにも病気の特徴が関わっている。

 双極性障害は、躁や軽躁よりもうつ症状が出る期間の方が長く、海外の研究によれば1型では約3倍、2型では30倍以上に上る。受診するのも、本人が苦しいうつ状態の時がほとんど。症状の訴えは、うつのつらさが中心になる。

 「常に双極性障害を疑うよう努力しているが、うつ病と診断し5年以上抗うつ剤を処方していた患者さんが、双極性障害の2型と最近分かった」と渡辺さんは話す。抗うつ剤は気分を向上させる薬。双極性障害ならば、気分の波を小さくする「気分安定薬」が治療の基本で、抗うつ剤だけだと病気が悪化してしまう場合もあるという。

 
 日本うつ病学会が活用を呼び掛ける「ライフチャート」などの記入例

 渡辺さんによると、2型の軽躁は「こうありたい自分」と重なっていることも多く、それを病気の症状と認めることに抵抗を感じる人も多い。

 ▽ツール活用を

 そうしたことから、診断にも治療にも、自分の体調の経過を客観的に把握できるツールが役立つ。加藤さんらは、患者や家族向けに病気を分かりやすく解説した冊子「双極性障害とつきあうために」のほか、過去の気分の変動をグラフ化して振り返る「ライフチャート」や睡眠と日常の気分や行動を記録する「睡眠・覚醒リズム表」などを学会のホームページに掲載、活用を呼び掛けている。

 「正しい診断には、医師に多くの情報を提供することが大切。睡眠の状態は症状と関係が深く、気分は自分と家族で評価が異なることも多いので、リズム表は家族と一緒に書いてもらうのがいい」と加藤さん。

 学会では渡辺さんを中心に、双極性障害の治療ガイドラインを使った医師向けの講習会を今年から始めた。今後も継続し診断・治療の水準を向上させたいとしている。

(共同通信 吉本明美)

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