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医療新世紀

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転移前立腺がんに新戦略 同じ仕組みで検査と治療

2019.9.24 0:00

 前立腺がんは比較的進行がゆっくりで治療の選択肢も幅広い。ただ、根治を目指しても再発や転移が生じる場合がある。そんな再発、転移した前立腺がんを、放射性物質と結び付けた薬剤を利用して探し出し、さらに同じ仕組みを利用してたたく「PSMA標的診断・治療」の開発が進んでいる。海外で検査の有用性が報告され、延命効果があるとした研究もあり、専門家の関心は高い。患者団体は日本でも早期実現をと期待している。

 
 

 ▽PSMA標的

 京都大病院放射線部の中本裕士准教授(核医学)は「従来の検査では前立腺がんの転移巣が見つけにくいことが課題」と話す。

 広く普及しているエックス線によるコンピューター断層撮影(CT)検査や、骨の代謝の激しい箇所を見つけて転移を診断する骨シンチグラフィーなどは鋭敏さに限界があり、転移を診断できないことも多かった。

 腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が上昇してもがんが見つからなければ、適切な治療選択は難しい。「これに対してPSMAを標的とする方法は、がんそのものを明瞭に捉えられるので診断治療に有望だ」と中本さんは言う。

 PSMAは、ほとんどの前立腺がんでがんの表面に特に多く現れるタンパク質。検査では、京大薬学部で開発したPSMAに結び付く薬剤に、放射性物質「フッ素18」を結合させ、静脈から投与。薬剤とともに再発、転移したがんに集まった薬剤からの放射線を、陽電子放射断層撮影装置(PET)で捉えてがんの有無、箇所を診断する。

 
 骨転移した前立腺がんの診断画像。矢印の先にある病巣が、CT画像(左)では見えないが、PSMAを標的にしたPET画像(右)では光って見える(京都大提供)

 ▽実用化へ研究

 中本さんらは今年2月、この検査の有効性を確かめる臨床研究を開始。PSAの上昇などで再発や転移が疑われる患者にこの検査をして、従来の方法では不明瞭だったがんを捉えられるかどうかを検証中だ(現在、患者募集は中断している)。

 実用化すれば、進行度や病巣の大きさ、箇所などがより正確に分かり、放射線治療の範囲を絞り込んだり、特に深刻な箇所だけ手術したりすることも可能になるという。

 同様の診断法の研究は北海道大、筑波大などでも独自の薬剤と放射性物質で進められている。

 ▽学会でも話題

 この検査の仕組みは、理論的には治療にも使える。検査でがんが写るのは、表面にPSMAが多く現れている証拠。放射性物質を検査とは違う種類に取り換えれば、物質が発する放射線によってがん細胞を攻撃することができるはずだからだ。

 泌尿器科医で馬車道さくらクリニック(横浜市)の車英俊院長はこの方法の治療への利用に強い関心を寄せる。「放射性物質ルテチウム177などを使って、この治療法の安全性と有効性を実際に患者に投与して確かめる研究が各国で進んでいる。延命効果が報告され、国際学会ではこの治療法にテーマを絞った討議の場が設けられるほど、注目度は高い」と話す。

 大手製薬会社などが主導し、この治療法の臨床試験も最終段階まで進んでいる。車さんは、治療研究に取り組む海外の医療機関の情報を患者に紹介しているが、「最終的には日本でも世界に後れを取らずにこの治療ができるようになることが目標だ」と話している。

 前立腺がん患者団体「腺友倶楽部」の武内務理事長は、患者の立場から「腫瘍マーカーが上昇し再発が疑われても、がんを特定できなければ具体的な治療法が見えてこない。PSMAを標的とした検査と治療の早期実現を願う声は大きい。専門医と協力して、こうした声を国にも届けたい」と話している。

(共同通信 由藤庸二郎)

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