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医療新世紀

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糖尿病治療は継続が鍵 企業に配慮を働き掛け 名古屋でモデル事業

2019.9.3 0:00

 糖尿病は、薬剤の進歩によって合併症の発症、進行を抑えられるようになったが、それには定期的な通院と服薬が欠かせない。課題は勤労世代の受診率の低迷だ。多忙を理由に治療を中断し、合併症が進んでから受診するケースが後を絶たない。重症化予防を目指す国のモデル事業として、勤務先企業に糖尿病患者への配慮を働き掛ける取り組みが始まった。

 ▽チームで支援

 
患者の治療と仕事の両立支援について話し合う中部労災病院の中島英太郎・糖尿病センター長(左から2人目)ら

 7月、名古屋市の中部労災病院の一室に医師と看護師、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士ら医療チームが集まって症例検討会が開かれた。就労と治療の両立支援のために取り組む国のモデル事業の一環だ。

 「血糖管理はまあまあだがもう少し下げたい」「体重は減らして横ばい。今後の変動に注意しよう」「工場の立ち仕事で、自動車通勤だと体を動かさないですね」…。次々に意見が交わされる。

 同病院の中島英太郎・糖尿病センター長によると、メンバーが患者から聞き取った、生活に関する悩みや職場で感じた糖尿病による不都合をチーム内で共有し、その後の治療や生活改善の指導に生かす。

 この事業のポイントは勤務先に配慮の必要性を伝えること。同病院の運営主体である労働者健康安全機構が作製した「両立支援手帳」に必要事項を記入。患者を通じて勤務先に届け、対応について回答してもらう。

 がんや心臓病など頻繁な通院や勤務の軽減などが必要な病気に比べれば仕事への影響は少なくて済むとはいえ、職場の理解と患者への配慮は大切だ。時間休や半休などの制度で、定期的な通院ができるようにすることが最優先。ほかに、血糖測定やインスリン自己注射を落ち着いてできるような環境が求められる。交代制勤務や夜勤などで食事が不規則になるのも望ましくない。

 患者ごとに必要な配慮は異なるが、医師から求めることで実現しやすくなる。中島さんは患者の勤務先を訪れて情報交換することもあるという。

 ▽腎症悪化も

 全国42の医療機関の患者1753人を対象にした調査では、糖尿病を指摘されてから6カ月以上受診しなかった人は19%。男性で働き盛り世代の未受診が多かった。治療を中断した人は22%。やはり男性の中断率が高く、初診年齢が若いほど顕著だった。糖尿病は、自覚症状が乏しいまま悪化したり合併症が進んだりする。この調査でも、治療を中断した人の方が糖尿病性腎症の病状が進んでいることが明らかになった。

 厚生労働省研究班の調べでは、中断理由は「仕事や学業が忙しい」「医療費の経済的負担」「体調が良いから」「通院しなくても大丈夫だと思う」の順で多かった。

 ▽自己責任ではない

 どうしたらもっと多くの患者に治療継続を働き掛けられるか。

 5月に仙台市で開かれた日本糖尿病学会のシンポジウムでは、「忙しいから」という治療中断の主たる理由を乗り越える方策を話し合った。

 
  両立支援のためのマニュアル類

 中島さんはモデル事業について解説。健康保険組合連合会からは、500以上の健保組合が糖尿病重症化予防の取り組みを始めたこと、厚労省担当者からは、がんや脳卒中などと併せて「治療と仕事の両立支援」「企業と医療機関の連携」などのガイドラインやマニュアルを作成し、利用を呼び掛けていることが紹介された。

 中島さんは「2型糖尿病は生活習慣病で自己責任と思われがちだが、遺伝などさまざまな原因があり、誰もがなり得る病気。1型糖尿病は免疫異常の病気で生活習慣とは無関係だ。企業や社会が糖尿病に配慮する必要はないという考えは改めてほしい」と訴えている。

(共同=由藤庸二郎)

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