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医療新世紀

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体験通じ、接し方学んで 地域力向上目指し講座 認知症で京都の団体 

2019.8.20 0:00

 急増する認知症の当事者や家族を支える人を増やすため、地域住民らが当事者への接し方を学べる場を設ける動きが出ている。京都市の団体「おれんじ畑」は、実際に接する機会などを通して当事者の気持ちや特徴を深く知ってもらう講座を開催。体験に重きを置くことで、知識に加え感覚的にも接し方のこつをつかんでもらい、認知症への地域の対応力を高めようとしている。

 ▽イエスかノー

 
  東徹さん(左)と増本敬子さん

 「相手が答えにくそうにしていたら、イエスかノーで答えられる質問に変えてみて。ちゃんと話を聞く姿勢を見せ、楽しんでいきましょう」
 昨年11月、京都市内の特別養護老人ホーム(特養)で開かれた体験型の認知症介護講座。講師の増本敬子さん(62)は、集まった住民7人にそう語り掛けた。

 おれんじ畑は、増本さんら介護福祉士や、精神科医らが中心となり2016年に設立。手弁当で活動を続け、初級編、中級編、上級編の3段階に分けた1回2時間程度の無料講座を関西で開いてきた。

 講座では、中心メンバーの精神科医、東徹さん(39)が、認知症にはアルツハイマー型やレビー小体型など複数の種類があること、記憶障害や徘徊、幻覚といった症状の特徴を説明。増本さんは、さまざまな場面を想定して参加者が役割を演じるロールプレーで主に患者役を演じ、当事者の言動の意味をどう読み取るかを参加者に教えたり、声の掛け方を実践してもらったりする。今まで300人余りが受講した。

 ▽実践の場を

 厚生労働省は認知症を正しく理解し、当事者らを温かく見守る人を増やそうと、05年から「認知症サポーター養成講座」を進め、全国で1100万人余りがサポーターになった。ただ同講座は1時間半程度の座学が中心で実際に患者と接する機会はない。増本さんらはより深く実践的に学べる場が必要と考え、体験重視の講座を始めた。

 
 

 演じる患者の姿は増本さんが15年以上の介護経験で出会ってきた人たちを参考にしている。「理解できない行動にも必ず理由がある。体験を通して、こうしたら喜ぶ、あるいは嫌がる、と繰り返し学んでもらう」

 この日の参加者はこれまでに初級編と中級編を計5回受講し、今回初めて開かれた上級編に挑戦した。当事者の入所者5人の隣に座り、会話が始まった。

 「東京でね、店をしていたんですよ」と入所者の女性が話し始めると、参加者の一人は「ほお、そうなんですか」と目を見つめながら大きくうなずく。同じ話が繰り返される場面もあったが、笑顔で耳を傾けていた。会話は弾み、入所者らから「今日はにぎやかだね」と明るい声が上がった。

 ▽差別防ぎたい

 受講した京都市伏見区の無職池田慎一郎さん(77)は「住んでいる団地には認知症の人もいる。話すときは笑顔でいるとか、これまで学んだことを生かして、違和感なく話ができた」と手応えを感じていた。

 体験を重視する取り組みは国内各地に広がる。フランスで生まれた、話し掛け方や体への触れ方などを具体的にまとめた「ユマニチュード」と呼ばれるケアの手法を学ぶ機会を提供する大学や自治体もある。

 認知症の高齢者は年々増加し、厚労省は、25年には65歳以上の5人に1人に当たる約700万人に達すると推計する。

 東さんは「認知症の人が絡む事故やトラブルが増えると、当事者の差別につながっていく恐れがある」と危ぶむ。「それを防ぐために、実践的な対応力を身に付けた人が地域に必要。もっと育てていきたい」と意気込んでいる。

(共同通信 岩村賢人)

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