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医療新世紀

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産後うつ防止は妊娠中から 多職種連携の有効性実証  母親支援のシステム

2019.8.13 0:00
 産後の母親は、ホルモンバランスの乱れや生活環境の激変、育児のストレスなどによって心の不調を起こしやすい。こうした母親たちを医師や看護師、保健師ら多くの職種で妊娠中から支え、いわゆる「産後うつ」を防ぐ取り組みが始まっている。国立成育医療研究センター(東京)のグループは、長野県須坂市などの母子保健関係者と協力して進めた妊産婦支援システムによって、母親の精神の安定が期待できることを実証したと発表した。

 ▽子どものためにも
 
 須坂市などでの取り組みは2013年から。長野県立須坂病院(当時)の小児科部長だった石井栄三郎医師の発案がきっかけだ。
石井栄三郎医師
      石井栄三郎医師

 「母親から子どもへの虐待の報告が相次いでいた。母親の心身が不安定になると起きやすくなることが分かっており、子どものためにも何とかできないかと考えた」

 石井さんは、旧知の小泉典章・長野県精神保健福祉センター所長に相談し、世界的に使われている産後うつのリスクを点数化する質問票に、全ての妊産婦が答えるようにすることを提案した。今は妊娠が分かって母子手帳の交付を受けるとき、退院時、保健師が自宅に訪問するとき、新生児健診時などに繰り返し答えてもらっている。
 
 点数(リスク)の高い女性を抽出した後は、医療機関にいる産婦人科や小児科、精神科の医師と看護師、助産師、退院後の地域にいる保健師が定期的に集まって、それぞれが診察や看護、訪問などの際に把握した母親の状態、子育ての環境などについての情報を交換し、支援策を検討する。
 
小泉氏
      小泉典章氏

 ▽顔見知りの安心

 母子保健コーディネーターとして当時、医療機関と地域をつなぐ窓口となって母親支援に当たった須坂市健康づくり課の保健師、赤沼智香子さんは「妊娠中から話を聞くことで、産後を不安に感じるお母さんに、支援策や保育などの制度や相談窓口などをきめ細かく紹介できるようになった」と振り返る。
 
 自分の不安を話すことをためらう母親もいるが、質問票に書くだけなら協力してくれる。回答をきっかけにすれば、子育ての不安を具体的に尋ねやすい。このシステムができるまで、保健師が出産後に訪問する際が母親と保健師の初対面になるケースが多かったが、妊娠中から顔見知りになることでその後の相談も安心してできるという。
 
 精神科医の小泉さんは「子育てが始まって孤独やいらいらを感じるようになってから支援を始めても、母親は素直に受け入れられないことがある。早くから関わることが有効だ」と指摘した。
 
 長野県では同様のシステムを全市町村に広げる取り組みが進行中。山梨県でも取り入れられるなど広がりを見せている。
 
 

 

 ▽須坂モデル

 国立成育医療研究センターこころの診療部の立花良之・乳幼児メンタルヘルス診療科診療部長は、厚生労働省研究班の代表として、この取り組みを「須坂モデル」と位置付け、導入前後の母親を比較、分析した。
 
 その結果、導入後の母親は導入前の母親に比べて、出産から3カ月後の産後うつリスクが低くなることが確かめられた。一方で、相談窓口の利用、両親教室への出席、訪問保健師を受け入れる割合のいずれも導入後が高かった。
 
 立花さんは「こうしたシステムで早期から継続的な支援ができれば、産後の女性の精神的な健康を保ち、女性とその子どもがより多くの保健サービスを受けられるようになる」として、同様の取り組みが全国に広がることを期待している。
 
(共同通信 由藤庸二郎)

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