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医療新世紀

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神経内分泌腫瘍が急増 膵臓や消化管で発症 新治療求め渡航患者も

2019.7.9 0:00

 「神経内分泌腫瘍(NET)」という聞き慣れない悪性腫瘍が急増している。米アップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が発症したことでも知られる。日本では膵臓や直腸など消化管で見つかることが多いが、一般的な膵臓がんや大腸がんとは性質が異なり、違う治療が必要だ。診断法や薬剤による治療法が進歩した一方、欧米で承認された放射性物質を利用した治療が日本では未承認のため、海外渡航を選ぶ患者もいる。どのような病気なのか、専門家に聞いた。

スティーブ・ジョブズ氏
       スティーブ・ジョブズ氏

 ▽日本で1万1千人

 NETの患者を多く受け入れる横浜市立大の市川靖史教授によると、NETはまれな希少がんに位置付けられているが、2010年に世界保健機関(WHO)が初めて腫瘍の分類を明確化して以降、世界的に診断例が増えた。米国のがん登録データでは、大半のがんの発生率は伸びが抑えられてきた一方で、NETは急伸した。

 日本でも、伊藤鉄英・国際医療福祉大教授らが膵臓と消化管のNETを調べた研究で、05年に全国で7千人余りだった患者が10年には1万1千人を超えた。市川さんは「横浜市大のデータからはもう少し多いかもしれない。もう希少ながんとは言えない状況だ」と話す。

 NETはその名の通り、ホルモンを分泌する神経内分泌細胞に由来する腫瘍。型によって血糖値を調節するインスリンやグルカゴン、胃酸分泌に関わるガストリンなどのホルモンが異常に分泌され、体の不調を起こして発見されることが多い。

 
 

 だが、横浜市大の患者では、そうしたホルモンを異常分泌するタイプは患者の約1割。ほとんどは無症状のまま進行するのが厄介だという。近年は便潜血検査や大腸内視鏡、胃の内視鏡、腹部超音波などの検査が普及し、無症状の段階で見つかる例も増えた。

 ▽判別が大切

 小林規俊・横浜市大准教授は「診断方法は確立しており、一般的な膵臓がん(膵管がん)や大腸がんとしっかり見分けて診断することが大切」と話す。

 小林さんによると、進行して転移がふえると根治が難しいものの、治療法は年々進歩している。転移が無いか、転移が限られている場合は手術により切除し、さらに、腫瘍の性質や進行度に応じてホルモン剤や抗がん剤、分子標的薬などを用いて治療することで、成績も向上してきたという。

 新たな治療法として、17年以降、欧米で相次いで承認されたのが、ペプチド受容体核医学内用療法(PRRT)だ。放射性物質にNETの細胞に結びつく性質を持たせ、腫瘍に集めて至近から放射線でたたく。

 
 

   ▽早期承認訴え

 絹谷清剛・金沢大教授(核医学)によると、静脈に注射すると全身に行きわたり、転移した腫瘍にも取り付く。重い副作用も少なく、生存期間の延長などの効果が認められて、海外では既に標準治療の一つとなっている。

 ただ日本では、欧米と主な発生臓器が違うことなどが指摘されて臨床試験に時間がかかり、未承認だ。この治療を求めて横浜市大が提携するスイスの大学病院に渡航する患者もいるが経済的、体力的に負担が大きい。

 横浜市大が渡航患者に尋ねた調査では、1回の渡航に100万円以上かかる例も多く、3回の治療のため総額約550万円かかった患者も。体力や病状などの理由で渡航がかなわず、標準的な3回の治療ができない人も多い。患者らは医師らと連携し、国内でもこの治療を受けられるよう国に早期承認を訴えている。

(共同通信 由藤庸二郎)

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