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医療新世紀

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どう防ぐ子どもの薬誤飲 重要な社会の啓発

2019.5.14 0:00

 乳幼児による大人の薬の誤飲事故が後を絶たない。防止策の一つとして、子どもには開けにくい「チャイルドレジスタンス(CR)」と呼ばれる包装容器の導入が検討されているが、コストは誰が負担するか、使いにくさに納得が得られるかなどの課題がある。専門家は「現状は社会の理解が不十分。子どもの誤飲が深刻な問題であることを徹底して啓発するのがまず必要だ」と指摘する。

  ▽注意していても

 厚生労働省のモニター病院調査によると、2017年度の子どもの誤飲事故はたばこが23・0%と最多。医薬品・医薬部外品は14・4%でそれに次ぐ。喫煙率の低下でたばこの誤飲が減少傾向なのに対し、医薬品などの比率はほぼ横ばい。包装を開けて中身を取り出せるようになる1~2歳の事故が目立つ。

 
 

 睡眠薬や糖尿病治療薬をはじめ、薬の種類や量によっては重い中毒症状が起きる。厚労省や医薬関係団体は「薬は子どもの手の届かない所で保管を」と呼び掛けているが、戸棚にしまってあった薬を1歳児が重ねた座いすなどに乗って取り、誤飲した例も報告されるなど、注意していてもなお事故は起きている。

  ▽使いにくい

 CR包装容器導入の検討が本格化したのは、消費者庁の消費者安全調査委員会が15年12月、海外の導入国では子どもの薬の誤飲が減少したなどとして、厚労省に導入策の検討を求めてからだ。欧米では、押し下げながら回さないとふたが開かないボトル型など各種のCR容器が普及している。

 国の研究班がスタートし、製薬業界団体も容器の標準設計について検討を開始。だが業界では「対応は各社で」との結論となり、製造段階で一律に対応が取られる可能性は当面、小さくなった。

 研究班長の土屋文人・国際医療福祉大薬学部特任教授は「欧米ではCR化の費用を薬の価格に上乗せできるが、日本の医療用医薬品はそれが認められない。企業にとってコスト的に厳しい面があるのは確か」と言う。

 利便性にも影響がある。研究班の一員で人間工学が専門の小松原明哲・早稲田大教授は「CR包装容器は、高齢者や手の力の弱い人にはどうしても使いにくいものになる」と話す。自分は使いたくない、薬を取り出せない、という人が出ることも十分考えられる。

  ▽対策は2段階

 ではどうすればいいか。土屋さんは2段階での対策を提案する。第1段階はまず、幼い子どもの誤飲事故が多いことを国民に広く知ってもらうこと。「現状は、医療者でさえ認識が十分とは言えない」ためだ。

 具体策としては、医療機関や薬局の待合室にあるお知らせ用画面に、事故防止の啓発ビデオを繰り返し流すなどし、薬をもらう大人が危険性を認識しやすくする。

 その上で第2段階として、子どもを危険から守るのに役立つ製品を普及させる。「CR機能を付加した袋の活用などが考えられる」という。

 ある製品は、見た目は普通のチャック開閉式プラスチック袋だが、力で広げようとしても口は開かない。特定の場所に親指を入れ、両手で押し広げるようにすると開く。薬に限らず子どもには危険な小物も収納可能だ。

 錠剤やカプセルが入ったシートの裏に貼る、なめると苦い味がするシールなども開発中。これらは薬局などで希望者だけに薬と一緒に渡す使い方が考えられる。

 「乳幼児がいる家庭や、孫が時々来る家など、必要な人が必要な時に薬局や医療機関の売店で容易にCR製品を入手できるようにすることはすぐに可能だ。そして社会がCRの必要性を十分理解してから導入規模を広げるのが現実的ではないか」。土屋さんはそう話す。

 (共同通信 吉本明美)

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