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医療新世紀

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救急車呼ぼうか迷ったら 電話相談が全国拡大中 人の確保、待遇に課題も

2019.5.21 0:00

 体調が悪くなったとき119番で救急車を呼ぶべきか。迷ったときにアドバイスがもらえる相談電話の設置が各地で進んでいる。救急車の運用効率化を狙って総務省消防庁が「救急安心センター事業#7119」として導入を呼び掛けている制度。出動が減る効果や、逆に、相談した結果、速やかに治療が受けられたケースが報告され、効果が徐々に表れている。半面、緊急度判定の正確さの向上、相談員の待遇改善など課題も多い。

  ▽今すぐ?翌日?

 横浜市で「#7119」を受信する救急相談センターは同市中区のビルの中。ヘッドセットを着けた相談員が並ぶ。相談員は専門の研修を受けた看護師で、2~14人が24時間体制で対応。電話が多い午後6~10時は救急医が交代で詰め、その他の時間帯も医師が常に電話で助言できる体制だ。

横浜市救急相談センターの統括責任者を務める六車崇医師
  横浜市救急相談センターの統括責任者を務める六車崇医師

 2016年の稼働時から、入電に対する応答率95%を目標に予算や研修を拡充し、応答率は約98%を維持。昨年は17万件余りの相談を受けた。センターの統括責任者である六車崇(むぐるま・たかし)医師は「難しいケースで適切に対応できたか、お互いに日々チェックしている」と話す。

 この電話相談は医療行為ではない。六車さんは「救急車を呼ぶべきか、夜間診療所に行くべきか、翌日の受診でいいのかだけを答える。病気や薬の相談には応じられません」と話す。利用に当たっては「症状や経過について相談員の質問に答え、判定結果と助言を参考に行動してほしい」とアドバイスした。

  ▽医療へつなぐ

 横浜市以外では東京、大阪など9都府県と札幌市、神戸市などが導入。山形、栃木、千葉、香川各県は#7119以外の番号で同様の事業を運営し、人口の約42%がカバーされた計算になる。

 
 

 同制度の必要性について、森村尚登・東京大教授(救急医学)は「高齢化による出動増加、救急病床の不足によって救急搬送の需給バランスが崩れたことだ」と話す。

 現場到着まで、病院収容までの時間は延び、出動した救急車が結局患者を搬送しなかったケースが全国で約1割あった。一方、重症なのに自力で受診し、もっと早く通報するべきだったと判断されるケースも依然多い。「自己判断は難しい。多くの利用者は救急車の必要性の判断がつかない」と森村さんはみる。

 ただ、救急車利用には地域差が大きい。1月に東京都内で開かれたシンポジウムでは「地方によっては、救急車を呼んだことを近所に知られたくないなどの理由で119番をためらう傾向がある」と指摘された。

 森村さんは「制度の目的は単に救急車利用を減らすことではない。真の目的は、患者をなるべく早く、緊急度に応じた適正な医療へとつなぐことだ」と強調している。

  ▽人が集まらない

 消防庁は森村さんを中心とした研究班を設け、呼吸や意識、痛みの箇所や強さ、事故状況など約100のチェック項目からなる相談業務の実施手順書を作成。利用者への指示とその後の医療データとを照らし合わせて随時改訂し、正確な判定の普及を図っている。

 ただ、制度の一層の拡充には課題も多い。

 シンポジウムでは運営側の出席者から「相談員が集まらない」との声があった一方で、「10年務めても新人と報酬が変わらない」との相談員の切実な訴えも。相談業務の医療との関係、位置付けが明確でないことへの懸念も聞かれた。認知度の低い高齢者への啓発の必要性も指摘される。

 総務省消防庁は「未導入の地域への働き掛けを強めるとともに、導入自治体間で情報共有を進め、事例の検証体制やリスク対策などの運用上の工夫にも取り組みたい」としている。

 (共同通信 由藤庸二郎)

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