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医療新世紀

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患者自ら副作用報告 未知の症状を早期に把握

2019.5.28 0:00

  これは薬の副作用では? そう疑われる症状を患者本人や家族が、国に直接報告する制度が3月から本格的に始まった。製薬会社や医療機関からの報告と合わせることで、知られていない副作用の傾向をより早く察知でき、安全対策の向上につながると期待される。

  ▽海外で成果

 報告制度は、医師が処方する医療用だけでなく、ドラッグストアなどで買える薬も対象。報告は医薬品医療機器総合機構(PMDA)のデータベースに登録され、専門家の意見を踏まえ、追加調査や薬の添付文書の改訂などの対応が取られる。

 制度の導入は欧米が先行した。PMDAによると英国では、高血圧治療薬アムロジピンをグレープフルーツジュースと一緒に飲むと、ふらつきなどの副作用の恐れがあるとの発見につながった。

 小腸などにあるアムロジピンを分解する酵素がグレープフルーツの成分で働かなくなり、血液中の薬の濃度が高まって効き過ぎてしまうという。現在は日本の添付文書にも「一緒に飲まないように」と明記されている。

 こうした薬と飲食物の「飲み合わせ」の問題は、患者の日常生活の中で起きるため医療者は気付きにくい。患者報告に期待される利点の一つだ。

患者がウェブサイトで薬の副作用を報告するための画面
  患者がウェブサイトで薬の副作用を報告するための画面

 では、実際に副作用が疑われる症状に気付いたらどうしたらいいか。まずPMDAの「患者の皆様からの医薬品副作用報告」のウェブサイトで、住所、氏名、医薬品名、使用期間・目的などを入力。さらに副作用の具体的な症状や起きた状況、治療を受けたか、回復したかどうかも記入する。

 副作用を治療して詳しく状況を把握している医療機関があれば併せて伝える。電話で報告用紙を請求し、PMDAに郵送で報告してもよい。請求先の番号は03(3506)9546。

  ▽薬害の教訓から

 実はこの制度は2011年度末(12年3月)から試行的に始まっていた。きっかけは血液製剤によってC型肝炎ウイルス感染が広がった薬害肝炎問題だった。
 問題を検証した厚生労働省の有識者委員会は10年4月の最終提言で、副作用情報の収集体制の不十分さなどを指摘し、患者からの情報を有効活用できる患者副作用報告制度の創設を提案した。

 厚労省によると、制度試行期間中の11~17年度に計717件の報告があった。うち676件は医療用医薬品に関する報告で、多かったのはワクチン155件、精神神経用剤113件、抗不安剤など52件、解熱鎮痛消炎剤48件。症状別では頭痛127件、倦怠感83件、めまい69件など。「死亡」との報告も26件あった。

 
 

  ▽課題や特徴

 PMDAは、全ての報告について安全対策の必要性を検討したとしている。10件については詳しい分析が必要と判断し、詳細を把握していると申告のあった医療機関に追加調査を実施。その結果、新たな対策が必要な事例はなかったという。

 試行によって課題や患者報告の特徴も浮かんだ。報告の4割は副作用症状の治療を受けておらず、経過などの詳細をつかめなかった。また15年度の報告数は、前年度から倍増し186件に上ったが、6割余りは子宮頸(けい)がんワクチンに関するものだった。当時、ワクチン接種後の全身の痛みといった症状が大きく報道されていた影響と考えられるという。

 厚労省研究班長として制度の在り方を検討した望月真弓・慶応大特任教授(医薬品情報学)は「副作用に最初に気付くのは患者。制度は未知の副作用の発見につながる」と意義を強調。「薬の名前や、飲み始めた時期、症状の経過などが大事なので、可能な限り詳細に、積極的に報告してほしい」と話している。

(共同通信 中沢祐人)

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