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医療新世紀

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医療機関にも後継者問題 高齢化で第三者譲渡増加 地域診療の維持に懸念

2019.5.4 0:00

 中小企業で悩みの種になっている経営者の高齢化と後継者不足が、医療機関でも起こっていることが、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の調査研究で明らかになった。特に小さな診療所が深刻で、地域医療の維持に黄信号がともる事態。研究チームは「早急に実態の解明と、スムーズな継承のための対策が求められる」としている。

 ▽有床診療所は半減

 調査した日医総研の堤信之、坂口一樹両主任研究員によると、20床以上の「病院」は1990年ごろをピークに減り続け、19床以下の「有床診療所」は2000年以降で半減。入院ベッドがない「無床診療所」は増えたが、11~14年には廃止・休止が急増し、危うい兆候があるという。

 
 

 民間の信用調査会社に日医総研が発注した調査では、後継者が決まっていないのは診療所で86%、病院で68%。全業種を合計した67%に比べ、特に診療所で後継者不足が歴然となった。後継者未定の割合は地域差が大きく、北海道・東北、関東甲信越、近畿で高く、中四国、九州は低かった。

 原因の一つは、医療機関では「開設者」「法人代表者」と呼ばれる経営者の高齢化だ。18年の帝国データバンク調べでは、04年から16年の間に平均年齢は病院で62歳から64歳に、診療所でも59歳から61歳になった。

 医療機関の経営者は原則として医師であることが求められるが、若手や中堅の医師は他業種と同様、開業するリスクを避けようとし、勤務医志向が強い。親族や子どもへの継承はまだまだ多いものの、第三者へのM&A(合併・買収)が明らかに増えているという。

 ▽苦労させられない

 
 

 病院の継承を数多く手掛ける税理士法人山田&パートナーズ(東京)医療事業部の税理士、上田峰久さんは、第三者譲渡が増える要因として、経営者の高齢化とともに病院建物の老朽化もあるとみる。相続で継承することを選べば、将来の建て替えに伴う多額の負債を後継者に背負わせることになる。「経営者が地域医療の維持を重視すれば、資金や人材が豊富な医療法人などへの売却を考えるのは自然なことだ」という。

 上田さんによると、譲渡の課題は医師や看護師らに残ってもらうこと。代替わりを機にスタッフが去るリスクがあり、新しい経営者には経営理念を丁寧に説明してもらっているという。

 診療所のM&Aを支援している東京の税理士、鈴木克己さんは「経営者自身が『自分と同じ苦労を身内にさせられない』と、第三者の買い手を探すケースもある」と話す。医師への融資審査も厳しくなり、買い手側も一から開業するよりリスクが小さい。

 診療所をうまく継承するために、鈴木さんは売り手と買い手の医師が半年から1年ぐらいの間、共に診察に当たることを勧める。経営者の考え方や診療所の地域での役割が受け継がれ、患者も新体制に早く慣れるという。

 ▽手引書作成へ

 鈴木さんは「医療機関は“社会的公器”だ。売り手には、譲渡後に周辺の医師や患者から『なぜあんなところに売ったのか』と言われたくないとの気持ちが強い」という。「地域医療を守る観点から、医師会が仲介の労を執ってもいいのではないか」と提案した。

 堤さんらは「きちんとした統計がなく、若い医師の意識も把握されていない。早急に調べるべきだ」と指摘。日本医師会の小玉弘之常任理事は「継承が滞れば医療圏の衰退、崩壊につながりかねない。医師の偏在が強い地方ほど深刻で、学校医の確保や予防接種などにも影響が出かねない」と憂慮する。日医総研では、医業継承の段取りや注意点、事例をまとめた手引書の作成を検討中だ。

(共同通信 由藤庸二郎)

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