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医療新世紀

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高齢者の大腿骨折、早期手術を 再発予防も多職種で

2019.4.1 0:00

 70歳ごろから急増するといわれる高齢者の大腿骨骨折。どんな医療を受けるかによって、その後の生活が大きく変わるという。特に大切なのは、できるだけ早期の手術と次の骨折の予防だ。多職種による取り組みで成果を上げる病院が出てきたほか、合理的な治療を広めようと、民間団体も活動を開始した。関係者は、骨折治療の重要性について、患者の意識も変えたいと意気込んでいる。

 ▽待機は1・6日

 富山市内で家族と暮らす80代後半の女性は昨年、自宅で手洗いに行こうとして転び、脚の付け根の大腿骨を骨折した。簡単に折れてしまうのは、骨がもろくなる骨粗しょう症が進んでいたため。こうした例は高齢女性では珍しくなく、大腿骨骨折がきっかけで自立度が低下し、寝たきりになってしまう人も多い。

 だがこの女性は幸運だった。救急車で富山市民病院に到着したのは午前9時ごろ。整形外科、救急の内科、循環器内科などの医師が相次いで診察し、搬送の約5時間後には、骨に金属の補強材を入れる手術が始まった。

 翌日はベッドに座り、2日目には立ち上がる訓練を開始した。退院し家に戻った時には、骨折前と同様、手押し車(シルバーカー)で外を歩けるまでに回復した。

 「高齢の患者さんは手術が遅れるほど肺炎などの合併症が増え、全身状態が悪くなることが海外の研究で分かっている。まずはいかに早く安全に手術を行うかが勝負です」。こう話すのは澤口毅副院長(整形外科)だ。

骨折した患者の検査画像を見る富山市民病院の澤口毅副院長(奥)と重本顕史高齢者骨折センター長
骨折した患者の検査画像を見る富山市民病院の澤口毅副院長(奥)と重本顕史高齢者骨折センター長(画像の一部を加工)

 

 同病院では、65歳以上の大腿骨骨折患者の手術までの待ち時間は平均1・6日(2017年)。日本整形外科学会の調査では全国平均は4・2日(16年)。どうやってここまで短縮できたのか。

 ▽病院全体で診る

 同病院が高齢骨折患者の治療体制を見直したのは14年1月だ。「英国や欧州は2日以内の手術が常識。何とか実現したい」と考えていた澤口さんが数年かけて準備した。

 手術が遅れる最大の原因は、高齢患者は大抵複数の持病があり、手術の可否の検討に時間がかかることだ。澤口さんらは「1人の骨折患者を病院全体で診る」仕組みをつくり、患者が到着したら、整形外科医だけでなく内科や患者の持病に関する科の医師が必ず診察し、情報は直ちに電子カルテで共有するようにした。

 「どの科の医師、看護師も素早く記入できるよう、カルテは何度も修正しました」と、重本顕史高齢者骨折センター長。

 
 

    ▽治療率アップ

 骨折した高齢者は再び骨折するリスクが高い。再骨折により、寝たきりや死亡の危険は一気に高まる。このため同病院では早期手術と並び、再発予防のための骨粗しょう症治療にも力を入れる。

 体制見直し前は、退院時点で骨粗しょう症治療をしている患者は39%だったが、薬剤師や栄養士が早くから関わるようになった見直し後(17年)は95%にアップ。

 成果は患者の機能回復にも表れた。入院リハビリ終了時点で、骨折前と同等の歩行能力を回復した患者の割合は、体制見直し前(12年)の35%から、14~16年の平均で53%に。「良いことをやっているという確信が職員の間に広がりました」と澤口さんは振り返る。

 こうした合理的な取り組みをもっと国内に広めようと、関心を持つ各地の医師が「日本脆弱性骨折ネットワーク」という団体を結成し、15年にNPO法人化した。

 理事長を務める松下隆・総合南東北病院外傷センター長は「高齢者の骨折治療は骨を固定して終わりではなく、トータルな治療で機能を回復させることこそが大切。特に早期手術と再骨折予防の重要性について啓発を続けたい」と話している。

(共同通信 吉本明美)

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