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医療新世紀

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誘因の病巣治して禁煙を 手足痛む「掌蹠膿疱症」 骨、関節にも要注意

2019.3.26 0:00

 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という病気がある。「掌」は手のひら、「蹠」は足の裏。そこに水疱(水ぶくれ)やうみがたまった「膿疱」ができて、角質層が硬いかさぶたになってはがれる。重症化すると手を使ったり、歩いたりするたびに激しく痛むし、外見の悩みも深い。骨や関節の痛みが出ることにも注意が必要だ。専門家は、皮膚症状を緩和すると同時に、病気の引き金となる感染病巣や喫煙などの誘因を根気よく取り除くよう勧めている。

 
 

    ▽うつらない病気

 照井正・日本大教授(皮膚科)によると、日本の掌蹠膿疱症患者は推定約15万人。発症は50代がピークで、男女比は1対2だ。照井さんは「免疫に関わる病気で、見た目で誤解されやすいが、人にはうつらない」と話す。

 なぜ手足にできるのか。最近の研究で、この病気はまず、手足に特に多い「汗腺」から水疱が発生し、水疱ができると炎症を起こす物質が免疫機構に誤った信号を伝え、免疫の暴走により発病することが分かってきた。

 症状が似た病気との診断が難しいこともあるが、無菌性であること、特殊な拡大鏡で見ると水疱の中にうみが浮いていることなどが特徴だ。

 骨や関節の炎症も起きる。首の付け根から胸、肩にかけての強い痛みが特徴で、重い人は寝返りも打てないほどだという。「この病気の症状だと気付かれにくく、心臓病が疑われても心電図に異常はない」と照井さん。脊椎や腰、手足などが痛むこともあり、皮膚とは別の治療が必要だ。

 
 

      ▽たばこで再発も

 聖母病院(東京)の小林里実皮膚科部長によると、多くの患者で発症の引き金になるのは「普段は問題にならない常在菌の感染病巣」。症状がほとんどないへんとう炎や歯周病、副鼻腔炎などだ。甲状腺炎や腸の状態も影響するとみられる。聖母病院の患者の約84%にこうした病巣があった。

 小林さんは「歯科や耳鼻科と連携して病巣を治療する。治りにくければ、免疫を抑える治療の前に、へんとうを摘出することも検討する」と話す。

 病気の誘因と疑われるもう一つは、たばこだ。患者の喫煙率は日本で60~80%、スウェーデンで約90%との報告がある。ニコチンは炎症物質ができるのを促し、患部にニコチンの受容体が増えることも判明した。禁煙で治るわけではないが、たばこを再開して再発する例があり、良い状態を保つのに禁煙は必須だ。

 ▽手入れしすぎない

 実際の治療では、感染病巣の治療、除去と合わせ、皮膚には塗り薬を用いる。塗り薬で効果がない場合、光線療法や内服薬も使われる。小林さんは「感染病巣を治しても、免疫反応が収まるまでは膿疱を繰り返し、治るのに時間がかかることは理解して」と話す。

 その間は「患部を刺激しない。塗り薬は絶対にすり込まない」のが大事。荒れた皮膚に衣類が引っかかると痛み、見た目も気になるが、傷んだ角質をむいたり、削ったりすると症状はいっそう悪化する。「保湿、保護のため、薬を塗ったら包帯で包み、手入れをしすぎない」(小林さん)

 昨年、これらの治療で効果がない掌蹠膿疱症患者向けに、初の生物学的製剤「グセルクマブ」(注射薬)が承認された。

 30代で発症し、朝起きて立ち上がるとき「画びょうの上を素足で歩くようだった」と話す女性患者は、精神科でストレス障害と診断されるなど30年以上の闘病の末にこの薬にたどりつき、症状が治まったと話した。

 関連学会は、この病気の詳しい情報が皮膚科医の間でも十分浸透していないとして診療ガイドラインを策定中。小林さんらは近く啓発のためのウェブサイトを開設することにしている。

(共同通信 由藤庸二郎)

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