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医療新世紀

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がんの子と家族支え50周年 環境変化で新たな課題 

2019.2.1 0:00

 子どもががんになると、親をはじめ家族は精神的にも経済的にもとても大きな負担を抱える。そうした患者、家族を支えようと設立された公益財団法人「がんの子どもを守る会」が2018年、50周年を迎えた。関係者は、守る会の歴史と小児がんを取り巻く環境の変化を振り返り、新たな課題への取り組みを強めるため社会の一層の理解、支援を訴えている。

「ペアレンツハウス亀戸」のプレイルームに立つ山下公輔さん
「ペアレンツハウス亀戸」のプレイルームに立つ山下公輔さん

 ▽父親2人の願い

 国立がん研究センターによると、小児がんには白血病(約40%)、脳腫瘍(約20%)、リンパ腫(約10%)のほか多様な希少がんがある。成人に比べ体の深部での発生が多く、手術は容易でない半面、抗がん剤や放射線の効果が高く、治癒率が向上しないがんもあるものの、近年は70~80%が治るようになった。

 守る会は、1960年代に東京の病院で子どもを失った2人の父親が主治医を通じて知り合い「小児がんを治る病気に、小児がんに苦しむ家族のいない世の中にしたい」という理念で68年に設立した。生命保険会社などの支援で初期から財団化され、専門家の少なかった小児がん研究を助成。患者家族を物心両面で支え、現在は本部と全国21支部で相談に応じる。新薬の認可や医療費の公的負担の拡充なども、国に改善を訴えてきた。

 ▽存在の証し

 宿泊機能を備えた支援施設「ペアレンツハウス」は東京と大阪に計3カ所。守る会の活動拠点でもある。多くの小児がん拠点病院に宿泊設備が併設された今も「希少がんの治療や臨床試験参加のため地元を離れた患者家族のニーズが高い」(担当者)という。

 関東地方の40代女性は小児がんの長男が東京で繰り返し入院した約10年間、ハウスを利用した。「低料金で病院通いに便利な場所にある。何より(守る会の)ソーシャルワーカーに助けられた。闘病中のやり場のない感情を泣きながら訴えたこともある」と振り返る。

 
 

 女性は、長男が3年前に17歳で亡くなった後も守る会の会員だ。いずれボランティアになりたいと考えている。「関係を断つのはさみしい。闘病当時のことを知る人と話せる場所。息子が存在した証しです」と話した。守る会は、子を失って悲嘆に暮れる家族の交流の場を提供している。

 ▽フォローが必須

 同会の山下公輔(やました・こうすけ)理事長は「治療環境、社会の意識は大きく変わったが、会の理念は変わらない」と話す。娘が幼い頃に白血病で闘病した経験を持つ山下さんは、がん全般を取り巻く環境の変化を実感している。

 「がんを告知するべきかどうかを議論したのは昔のこと。患者が治療法を選ぶのが当然になった。障害者や病気の人を社会が支える必要性に理解が広がった。そうした成人のがんを取り巻く環境の変化が、小児がんの療養生活にも良い影響を与えている」と話す。ただ、治る患者が増えたことで、成人になった小児がん経験者に特有の課題も明らかになってきた。

 発育途中でがんを発症すると、治った後も、がんそのものに加えて薬物、放射線など治療による長期的な影響が表れることがある。成長発達の遅れ、神経や臓器の異常、二次がんなどの「晩期合併症」だ。治療後の定期的な受診(フォローアップ)が欠かせない。

 山下さんによると、小児がん経験者は医療面にとどまらず、人生のさまざまな場面で課題に直面する。入院中や退院後の教育、合併症と就職、結婚や出産の問題などだ。近年は、小児がん経験者同士が成長後の悩みを語り合う「ピアサポート」のグループが各地で相次いで発足。守る会も支援を進めている。

(共同通信 由藤庸二郎)

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