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医療新世紀

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心不全患者にも緩和ケアを チーム医療の土台が重要 がんと異なる難しさも

2018.9.4 0:00

 重い病気に伴う苦痛を、薬や他の手法で和らげる「緩和ケア」。がんではその重要性が広く知られているが、心臓のポンプ機能が低下する心不全の治療でも重視され始めている。病気が進行し死が避けられなくなった終末期に、必要とする患者が多いためだ。だが、がんとは異なる難しさもある。心不全の緩和ケアに早くから取り組んできた専門家は、複数の専門職によるチーム医療の土台が重要だと指摘する。

 
 終末期を迎えた心不全患者のケアについてチームで話し合う佐藤幸人さんら(兵庫県立尼崎総合医療センター)

 ▽薬だけでは

 兵庫県尼崎市の県立尼崎総合医療センターでは毎週、佐藤幸人・循環器内科長ら心不全チームが、ミーティングで患者の診療方針を話し合う。参加者は循環器内科医のほか看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士ら。ある終末期の患者について話し合った7月中旬のミーティングには緩和ケア専門の看護師も加わり、本人が希望している退院が可能かを議論した。

 佐藤さんらは10年ほど前から、こうした多職種のチームで心不全の診療を進めてきた。患者の療養を支える家族の力が高齢化などで細ってきたのを目の当たりにし「医者が薬や手術で治療するだけでは解決にならない。家庭背景まで理解したケアが必要だ」と痛感したためだという。

 心不全で入院する患者の4分の3は70代以上だ。治療が奏功し再入院を防げれば、良好な体調を長く保てる可能性が高いが、短期間に2回3回と入院が重なると、一時は持ち直しても徐々に悪化し、死亡することが多い。

 チームはこのため、初回入院時から栄養や運動など本人の生活環境に目配りし、まず再入院の予防に力を入れる。「緩和ケアもこの延長線上にあります」と佐藤さん。

 ▽予測は困難

 
 

 世界保健機関(WHO)が2014年に発表した報告書によると、終末期に緩和ケアを必要とする疾患は、心不全を含む心血管疾患が38%と、がん(34%)を上回る。特徴的な症状として呼吸困難が知られるほか、不安など精神的苦痛の訴えもある。だが心不全の緩和ケアはがんのようには普及していない。

 佐藤さんによると、原因の一つは、入退院を繰り返しながら悪化する心不全の進行の仕方にある。「最期はいつか」の予測は専門医にも難しく、患者や家族は「治療すればまた良くなる」と考え積極的な治療を希望する傾向がある。そのため「緩和ケアの標準的な方法が確立されにくく、医療者と患者側が早い段階で終末期について話し合うのも難しい」という。

 ▽学ぶ機会なし

 佐藤さんが代表世話人を務める心不全緩和ケア研究会が、循環器疾患の診療に熱心な約千の医療機関にアンケートしたところ(回答率54%)、98%が心不全の緩和ケアは必要だとしたが、患者側と具体的なことを協議するのは「最期が近くなった時」が84%に上った。73%が「悪い知らせの伝え方を学ぶ機会がなかった」と答え、これも取り組みを遅らせる一因になったとみられた。

 佐藤さんらのチームは、患者が入院を繰り返した時点で、終末期に本人や家族がどんな治療を望むかについて、受け止める準備を始めるという。

 例えば、息苦しさを和らげるために薬剤で意識レベルを落とすと、家族との会話は難しくなる。それは本人の希望や人生観に合うのか。直接尋ねなくても、本人がふと口にしたことを電子カルテに記入し、各職種で共有するようにしている。

 心不全の緩和ケアは今年4月から、がんと並んで公的医療保険の対象になったため、全国の医療機関で徐々に取り組みが進むとみられる。佐藤さんは「技術的な難しさはチームの協力でかなり解決できる。その点の啓発を続けたい」と話す。

(共同通信 吉本明美)

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