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医学的効果の検証進む「マインドフルネス」 心の安定目指す訓練法   

2018.11.6 0:00
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 「マインドフルネス」と呼ばれる心の訓練法がある。瞑想などを通じて「今この瞬間」に注意を向ける方法を学び、心の安定を目指すものだ。生産性向上などビジネスの文脈での話題が先行したが、医学分野でも、欧米で報告されたさまざまな効果を検証しようという動きが出ている。

 
佐渡充洋さん(右端)と向き合い、静かに呼吸を繰り返す研究参加者ら
 

 ▽距離を取る

 マインドフルネスは「今この瞬間に、価値判断をせず注意を向けること」などと定義される。米国の研究者が1970年代に開発し慢性痛患者に実施したプログラムが注目を集め、欧米の研究で、うつ病の再発予防など複数の効果が報告された。

 「呼吸に伴う体の感覚に注意を向けましょう」
 東京都新宿区にある慶応大医学部の一室。精神神経科の佐渡充洋講師のリードで、床に敷いたマットやいすなどに座った十数人が、目を閉じ静かに呼吸を繰り返す。

 佐渡さんらは、マインドフルネスが健康な成人の心にどんな影響を与えるかを研究中だ。参加者を無作為に半分に分け、片方のグループに週1回、2時間のプログラムに8回参加してもらい、何もしないグループと心の健康度などを比較する。

 参加者は、さまざまな対象に注意を向け観察する練習を重ねる。呼吸に伴う胸や腹の動き、歩行時の体の感覚。雑念で意識が対象から離れても、静かに受け止め、対象にまた意識を戻す。

 参加者同士で感想を話しながら練習を続け、自分の思考や感情も観察対象に。やがてそれらと距離を取り、振り回されずに、自分にとって大切な「今ここ」を意識するこつがつかめるという。

 
 

 ▽自分を俯瞰

 参加した女性(32)は「自分を俯瞰(ふかん)的に見られるようになった。非科学的なものではと思ったが、効果を科学的に調べる研究と聞いて信頼感を持った」。50代の女性会社員は「ほかの人と話し、自分と違う見方や考え方があると分かったのは有益でした」と話した。

 慶応大チームはこれまでに同様の研究方法で、マインドフルネスのプログラムが不安障害患者の症状改善や、乳がん患者のうつ症状などの軽減に有効であるとの結果を得た。「医療者の燃え尽き防止にも活用できないか、調べようとしています」と藤沢大介准教授。

 ▽文化の違い

 日本マインドフルネス学会副理事長で、約10年前からこの方法を日本に紹介してきた心療内科医の熊野宏昭・早稲田大教授は「文化的な違いが効果や副作用に影響する可能性もある。日本人での効果検証は非常に重要だ」と話す。

 副作用については、過度に瞑想に集中し、体調を崩す人もいることが分かっている。心理療法では十分な知識がある医療者の関与が大切という。

 課題は、国内ではこうした臨床研究の参加者集めが簡単でないこと。データの信頼性を高めるには、参加者を「受ける」と「受けない」の2グループに無作為に分け、効果を比べるのが標準的な方法だが、「受けない方に入るかもしれないと分かると、希望者がぐっと減る」と熊野さん。

 このため慶応大をはじめ最近の研究は「受けない」グループの人も後で受けられるよう、参加しやすい配慮をしている。

 臨床研究に関心を持った人は、国立保健医療科学院がインターネット上で運営する「臨床研究情報ポータルサイト」で検索できる。書籍は、やや専門的だが佐渡さんらの編著で「マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本」(日本医事新報社)や、熊野さんらが一般向けに監修した「『キラーストレス』から心と体を守る! マインドフルネス&コーピング実践CDブック」(主婦と生活社)などがある。

(共同通信 吉本明美)

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