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「病、それから」島田裕巳さん(宗教学者) 働き盛りに長い休みを

2018.10.30 0:00
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 宗教学者島田裕巳さん(64)は、オウム真理教事件の際、教団を擁護したと批判を浴び、勤務先の大学を辞めざるを得なくなった。定期収入がほぼない年が重なり、発症した甲状腺機能亢進(こうしん)症。不遇時代をくぐり抜けた後に活躍する島田さんは「人生には長い休みが必要」と強調する。

島田裕巳さん
      島田裕巳さん

      ×   ×   ×

 入院したのは2003年秋です。おなかが張って苦しくなり、救急外来にかかったら、腹水がたまっていると。医師に「肝硬変か、肝臓がんか」と言われました。

 そのまま入院しましたが、寝ていられない。つい、体を起こしてしまうので看護師が不思議がっていました。医師が議論する声が聞こえるのですが、病名が分からない。そのうち女性の医師が「甲状腺じゃないですか」。甲状腺機能亢進症は女性に多いので視野になかったのでしょう。   

 ▽幻覚

 心拍数も上がっていたそうで麻酔で10日間、眠らされました。目覚めた後、医師から「8割の人が幻覚を見る」と言われ、実際に見ました。これが地獄でした。本から絵が飛び出す。医師や看護師が殺そうとしていると感じて怖い。宗教的な病院に入っていて攻撃される幻覚もありました。

 目を閉じても消えない。止められないのはこんなに苦しいのかと思いました。オウム真理教の信者は同様の体験をしたんだろうと感じました。結局、十二指腸潰瘍が見つかり、褥瘡(床ずれ)もできた40日間の入院生活でした。

 ▽どん底

 今、考えると、兆候はあったんです。1998年、急に痩せました。よく汗をかくようにもなっていました。甲状腺の活動が過剰になっていた可能性は高いですね。

 原因は分かりません。ただ、大きなストレスはありました。一連のオウム真理教事件が起きた際、教団を擁護したと激しいバッシングを受け、95年11月に大学を辞めました。教授になったばかりでした。その後仕事はなく、確定申告額は年間150万円とか180万円で入院前はどん底状態。貯金もなくなりました。

 入院生活の終わりごろに部屋でテレビを見ていたら、オウム真理教事件の教祖の裁判が結審して近く判決というニュースが流れました。先日死刑を執行された、麻原彰晃を名乗った松本智津夫元死刑囚のことです。

 報道を見た時に「これで一区切りがつく」と直感的に思い、運命的なものを感じました。実際、それから仕事が入ってくるようになりました。

 ▽卒人式

 今は元気です。体と気力は病気の前後で全然違います。もし大学にいたら、引き受けざるを得ないことが多過ぎて死んでいたかもしれない。何が幸いするか分からない。
 現在は年間10冊ぐらい本を出し、次の構想も浮かんできます。10年近く休んだことで、余力が生まれたためでしょう。

 そう考えると、長い休みが必要なのではないかと。現代は60代がゴールではなく、もっと働かないといけない。人生100年の時代、働き盛りこそ、長期に休む必要がある。40代、50代で3、4年休んでも、どうってことないですよ。

 入院時、医師は「感染症にかかっていたら、死んでいたかも」と言いました。今はいつ死んでもいいので「葬式は、要らない」の著者としては人を卒業する「卒人式」をやってもらおうか、と。

 人生を全うしたという点で、死は悲しむことではないと考えていますから。ただ、この年齢では、まだ宗教学者としては若くて重みが足りない。年を取れば取るほど、仕事が充実する世界なのです。

(聞き手・西出勇志、写真・萩原達也)

◎島田裕巳(しまだ・ひろみ)さん 1953年東京生まれ。東大大学院博士課程修了。専門は宗教学。放送教育開発センター助教授、日本女子大教授を経て著述業に。「創価学会」「神社崩壊」など著書多数。2010年の「葬式は、要らない」は30万部のヒット作となった。

◎甲状腺機能亢進症 新陳代謝を促す甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患で、心拍の増加や血圧上昇、痩せ、大量の発汗といった症状が出る。最も多いのが、甲状腺が腫れるなどするバセドー病。患者は男性より女性に多いとされる。

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