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医療新世紀

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交通事故!車が緊急通報  ドクターヘリの出動促す 全国運用、救命率向上へ

2018.9.11 0:00

 交通事故を起こした車から、その位置や衝撃などのデータを消防、ドクターヘリの基地病院に自動で緊急通報するシステムの全国運用が始まった。過去の事故記録を基に死者、重症者が発生する確率も割り出し、出動を早める狙いだ。関係者は、救命率向上や後遺症の軽減につながることを期待し、システム未搭載の自動車メーカーへも導入を働き掛ける。

 
 ディーコールネット実働訓練の模様(救急ヘリ病院ネットワーク提供)

 ▽衝撃で作動

 このシステム「D―Call Net(ディーコールネット)」は、認定NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク(ヘムネット)」(東京)とトヨタ自動車、ホンダ、緊急通報サービスを提供する各社が共同で運用。今年6月末で約730カ所の全消防本部、42のドクターヘリ基地病院を結ぶ。

 ヘムネットの石川博敏理事によると、運転席や助手席のエアバッグが作動するほどの事故が起きたり、追突で一定以上の衝撃があったりすると車載器が検知。車両の位置、衝突の向きと激しさ、シートベルト着用の有無、多重衝突の有無を車載器または連携した携帯電話から自動送信する。

 
 

 受信した緊急通報サービスのオペレーターは、運転者に呼び掛けて事態を把握し、救助要請がある場合や応答がない場合は関係機関に通報する仕組みだ。その際、受信したデータサーバーでは、過去の交通事故280万件の記録を基に開発した計算式により死亡・重症率を推定。通報先各機関の端末に事故の様態や死亡・重症率の推定値が表示され、早期の出動を促す。

 ▽後遺症低減も

 同様の通報装置は欧州連合(EU)が今年4月から域内で販売する全ての車に搭載を義務化。日本も「(緊急通報システム、事故自動通報システムの)格段の普及と高度化を図るために必要な環境を整備する」(2016年の第10次交通安全基本計画)として、普及を推進する姿勢だ。

 では、どのぐらい救命に貢献できるのか。

 
 ディーコールネットの訓練用事故データ画面(救急ヘリ病院ネットワーク提供)

 日本自動車研究所が、救急搬送された外傷患者のデータベースを基に解析したところ、自動通報により消防が事故発生を知るまでの時間が4分短縮される。ドクターヘリで医師が負傷者を診るまでは17分の短縮が見込まれ、全国の死者数を年間で282人減らす効果があると推定された。

 月約100回のドクターヘリ出動実績がある日本医大千葉北総病院救命救急センターの本村友一助教は「死亡を減らすだけでなく、入院期間の短縮、後遺症の軽減などが期待できる」と話す。

 本村さんによると、ドクターヘリ出動の約半数が外傷患者。そのうち半数が交通事故だ。17分の短縮が実現すれば、交通事故死の死因の約4割を占める多量出血に処置ができる可能性が極めて高いという。

 ▽普及拡大へ

 ただ、システムには課題も多い。

 本村さんは「交通事故死の多くは歩行者や二輪車、自転車の運転者。軽微な接触事故でも重傷になる。それらにも対応できるシステムの開発が急がれる」と話す。本村さんはまた、ドクターヘリが早く出動できても、着陸地点の安全確認が遅れれば効果が薄いとして着陸地点の拡充整備も訴えている。

 今のところディーコールネット対応の車載器が標準装備されているのは国産ではトヨタとホンダの一部車種。高級車が主だ。軽自動車を含めた普及拡大が「喫緊の課題」(ヘムネットの石川さん)だという。

 このため同ネットの関係機関は、車に後から取り付けできる「レトロフィット車載器」を開発中。本年度内をめどに基本仕様をまとめたいとしている。

(共同通信 由藤庸二郎)

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