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医療新世紀

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手術用具「ピッ」と管理医療事故防止にICタグ効率化、コスト削減も

2016.6.28 9:31
 手術の際に用具やガーゼなどを患者の体内に置き忘れる医療事故はなかなかなくならない。これを防ぐため、手術用具にICタグを付け、装置で「ピッ」と読み取って管理するシステムの採用が進んでいる。用具一つ一つに取り付けたタグをチェックすることで手術の安全性が高まり、業務の効率化、省力化にもつながりそうだ。

▽一つずつ溶接
 このシステムはRFIDと呼ばれ、無線を通じてICタグのデータを読み込む。自動改札や電子マネーでおなじみの仕組みだ。手術用具の管理のほか、薬剤にタグを取り付けるなどのシステムが導入され、成果が実証されつつある。

手術用具「ピッ」と管理医療事故防止にICタグ効率化、コスト削減も
 早くから取り組んだ島根県出雲市の島根大病院 には、金属製の手術用具が千種類近く、約2万2千点ある。副学長で病院の材料部長も務める大平明弘教授(眼科)によると、メスやピンセットなど一つずつに溶接でICタグを取り付けた。本体のICチップはセラミックに封入されてセ氏200度まで耐え、高温で滅菌しても傷むことはない。

 手術用具は種類が多く、新しい製品も続々と導入される。同じ用具でも診療科で呼び名が違うこともある。このため新システムの導入前は、手術の実務に通じたベテラン職員が管理に当たっていた。一方で新システムは、知識や熟練度を問わず誰でも作業が可能。作業時間も大幅に短縮されたという。大平教授は「担当部署はパート職員がほとんどだが、間違いは起きていない。用具の効率的な更新と人件費の削減で年間数千万円の節約につながった」と話す。

▽検索も簡単
 島根大病院では、手術用具を移動させるごとに、タグを読み取り装置にかざして記録する。手術室に用具のセットを送る際は、手術をする各診療科からの発注と個々の用具を照合する。手術前後にも読み取り装置で置き忘れや回収漏れがないかを確かめる。保管の前に手術用具ひとそろいを箱にまとめる「セット組み」の際には、用具ごとに作業者と作業内容を記録に残す。これで、用具のそれぞれで「どの医師がどの患者に使ったか」「いつ誰がどのようにセット組みしたか」が簡単に検索できるようになった。

 用具の行方不明や感染など万が一の事態が発生した場合には、管理データから用具の所在や、洗浄、滅菌の履歴を確かめ、疑念があれば同じ作業で取り扱った用具の使用を止めることが可能だ。

手術用具「ピッ」と管理医療事故防止にICタグ効率化、コスト削減も
 用具を一括管理することで、耐用年数や修理回数、更新時期、滅菌効果の有効期限など多岐にわたるチェックも容易に。島根大病院では滅菌有効期限が残り1カ月を切った用具を抽出し、滅菌をやり直す。

▽手術の質向上も
 ただ、体内への置き忘れ事故が最も多いガーゼ類は、タグの取り付けが難しく、このシステムでの管理は難しい。エックス線で写るガーゼ、シート状のタグを付けたガーゼも実用化されているが、より使いやすい製品開発が課題だ。

 医療現場の電波利用に詳しいお茶の水女子大の太田裕治教授(医用工学)によると、同様のシステムを新たに導入する医療機関では、ほかの医用機器と相互の影響がないか、事前に慎重な確認が必要だ。電子化によって記録が一元化されることから、患者の病名や治療経緯などの個人情報が外部に漏れないよう、より厳格な情報管理も求められる。

 太田教授は「将来は手術室での用具の使用頻度や使われ方を記録、検証することで、手術の評価や質の向上など、教育研修にも活用できるだろう」と話している。
(共同通信 由藤庸二郎)

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