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医療新世紀

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若年世代のがんに光を病棟開設、政策も注目復帰支援や治療向上へ

2016.8.23 9:38
 「AYA世代」と呼ばれる10代半ばから30代にかけての若年世代のがんは、小さい子どもや中年以降の患者に比べ治療の改善や研究が遅れがちだった。しかし近年、専門病棟を開設し、治療や社会生活支援の経験を蓄積する動きが出てきた。国のがん対策でも今後、光が当たる可能性がある。

若年世代のがんに光を病棟開設、政策も注目復帰支援や治療向上へ
▽進学の時期に
 静岡県に住む高校2年の翔太さん(16)=仮名=は一昨年6月、風呂場で陰のうが大きくなっているのに気付いた。「自然に治るかな」と思っていたが、9月には激痛が走り救急を受診。子どもに多いがんの一つ「横紋筋肉腫」と分かった。

 治療で精巣の機能が失われる可能性に備えて精子を凍結保存し、治療に臨んだ。当時は中学3年。中高一貫校なので進学の心配はなかったが、病院にいた同年代の患者は「志望校から受け入れを渋られた」と悲しんでいた。

 高校に進学してからも手術後の抗がん剤治療は続行。留年を避けようと、通院の時間帯を調整して遅刻や早退で出席日数を稼ぎ、テストを終えては病院に直行した。

 治療で髪が抜け、顔は青白くなった。帽子をかぶって登校し、弁当の匂いで気分が悪くなったことも。治療は高1の冬に終わった。髪も元に戻り、部活に入った。入院の経験から、将来は看護師になるつもりでいる。

 今は「普通が一番」とかみしめている。ただ、再発の不安は時々襲ってくる。経過観察のための検査結果を聞くのは毎回「心臓に悪い」。血尿が出た時には、どきっとして、独りでネットの情報をあさってしまった―。

若年世代のがんに光を病棟開設、政策も注目復帰支援や治療向上へ
▽経験蓄積を
 「標準的ながん治療は患者の多い成人を中心に考えられている。(一般に患者が15歳未満の)小児がんでも拠点病院ができるなど対策が進み始めたが、AYA世代には十分に医療が行き渡っていないのではないか」。翔太さんの主治医である静岡県立静岡がんセンターの石田裕二小児科部長はこう話す。「AYA」は「思春期」と「若年成人」を表す英語の頭文字だ。

 欧州のチームが今年5月に発表した研究によると、がんの5年生存率は小児もAYA世代も伸びている。しかし、急性リンパ性白血病では小児が86%なのに対しAYA世代は56%、横紋筋肉腫では小児が67%でAYA世代38%など、比較的多い8種類のがんでAYA世代の生存率が低かった。

 チームは「この世代に特化した臨床試験や診療ガイドラインが少ないことや、診断や治療の遅れが要因だ」と指摘。状況の改善を呼び掛ける。

 静岡がんセンターでは整形外科と脳神経外科などが協力し、AYA世代専門病棟を昨年開設した。患者に集まってもらうことで医療者の経験を高めるほか、データを蓄積し新たな治療法開発につなげたいとの思いがある。同様の取り組みをする病院との連携も目指す。

▽笑顔で社会に
 だが「まずは患者さんに笑顔で社会に帰ってもらいたい」と石田さんは話す。力を入れているのが仕事や学業を継続するための支援だ。

 「職場で立場が確立していない若い人はがん告知を受けると辞表を出してしまいがちだ」と石田さん。治療のための休職当初から会社との連絡を密にするよう患者に促すほか、ソーシャルワーカーが交渉を手伝うこともある。義務教育でない高校や大学に通う患者に対しては、留年せずに治療を続ける工夫を提案したり、学校側の意見を聞いたりしているという。

 国のがん政策の方向性を検討するがん対策推進協議会は昨年、「AYA世代への支援を考えるべきだ」と提言した。就労支援や緩和ケア、介護のあり方など、幅広い検討が必要とされている。
(共同通信 井口雄一郎)

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