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医療新世紀

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0歳児の接種、原則無料に対象拡大は今後の課題B型肝炎ワクチン

2016.10.18 9:32
 B型肝炎の予防ワクチンが10月から定期接種の対象になり、今年4月以降に生まれた0歳児は計3回の接種が原則無料でできる。B型肝炎は古くからある病気で、ワクチンも30年ほど前から普及している。それが新たに定期接種の対象になった背景にはどんな事情があるのだろうか。

0歳児の接種、原則無料に対象拡大は今後の課題B型肝炎ワクチン
▽少数派の日本
 B型肝炎は血液などの体液を介して感染するB型肝炎ウイルス(HBV)による感染症だ。専門家の推定によると国内の感染者は約110万人。感染力が比較的強い上、肝臓にウイルスが持続感染する「キャリアー」になると、一部が慢性肝炎になり肝硬変、肝臓がん発症のリスクがある。だが慢性肝炎は症状が穏やかで「気付いた時にはかなり悪化していることも多い」と、ウイルス肝炎に詳しい四柳宏・東京大医科学研究所教授は話す。

 1980年代にワクチンができ、世界保健機関(WHO)は乳児全員へのワクチン接種を推奨。昨年時点で194加盟国のうち185カ国がそうした全員接種方式を導入したが、日本は数少ない非導入国の一つだった。

▽様相が変わる
 日本が力を入れてきたのはキャリアー妊婦からの母子感染予防だ。妊婦健診でHBV感染が分かった女性から生まれた赤ちゃんに、免疫グロブリンとワクチンを注射する対策を86年以降全国で展開した。その結果、母子感染は激減し、予防率は95%以上と評価されるまでに。「B型肝炎はやがてゼロになると考えられていた」(四柳さん)。

 様相が変わったのは2000年以降のことだ。家庭内で父親やきょうだいから、または集団生活をする保育園など、人との密接な接触がある環境で乳幼児が感染した例(水平感染)が、少ないが明らかになった。唾液などの体液にウイルスが存在する場合があることも判明した。

 厚生労働省研究班によると、対策で母子感染が激減した結果、1986年以降に生まれた世代では、水平感染が母子感染を上回ると推計される。

 5歳未満の子ども、中でも3歳未満は免疫が未発達で、持続感染のリスクが大きい。症状も目立たないため見逃され、長期間感染源になってしまう可能性も指摘される。こうしたことが定期接種の実現につながった。

 四柳さんは「今は0歳など非常に早い時期から集団生活に入る子も多い。定期接種の実現は大きな進歩だ」と評価する。

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▽もっと支援を
 ただ定期接種の対象は1歳になるまで。それ以上は有料の任意接種だ。費用を助成する自治体もあるが一部にとどまる。

 千葉県に住む石川冬美さん(38)は母子感染でキャリアーとなり、結婚後に肝炎を発症した。子どもへの感染は防げたが、予防率は100%でないと聞かされた妊娠中は「もし感染したら」と心が休まる間はなかったという。治療薬の服用で現在の体調は安定しているものの、完治が難しいことへの不安はある。「どの子にもこんな思いはさせたくない」とワクチンの啓発活動に協力、定期接種化を心待ちにしていたが、1歳以上は対象外という結果に「なぜ?という思い」だと話す。

 任意接種の費用は3回で1万数千~2万円程度とされる。「経済的な理由から接種できない子もいる。感染症予防への公的な支援をもっと充実させてほしい」と石川さんは話している。

 定期接種の開始が年度途中の10月になったことから、実施上の注意点もある。計3回の接種には通常半年近くかかるが、例えば今年4月1日生まれの場合、来年3月中に3回目を終える必要があり余裕が少ない。「そうした保護者は早めに主治医と相談を」と医師らは呼び掛けている。
(共同通信 吉本明美)

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