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「病、それから」森まゆみさん(作家)自己免疫疾患と付き合った10年 

2016.11.8 9:37
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 朝起きると、フローリングの床がでこぼこに見えた。突然の目の変調、頭痛、吐き気、激しい疲れ...。2007年4月、伝説の地域雑誌「谷根千」の編集に加え、取材、執筆、講演、大学での指導で多忙な森まゆみさんを病魔が襲った。「原田氏病です」と告げられて「腹出し病?」といぶかったほど病気と無縁だった森さん。その後の10年は、完治しない病と付き合いながら、穏やかな暮らしを模索する「老い支度」の日々でもあった。

「病、それから」森まゆみさん(作家)自己免疫疾患と付き合った10年
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 「暗箱のない目」なんですよ、私のは。人間の眼球は「ぶどう膜」って巨峰みたいに黒い皮に包まれていて、カメラの暗箱のように中で光が像を結ぶ。その黒い色素がメラニンなんだけど、免疫がそれを間違って攻撃しちゃうのが原田病でしょ。「夕焼け状眼底」って、メラニンがなくなって薄い赤い色になっている。だからまぶしくてまぶしくて。どこへ行くにも遮光のサングラスを持ち歩いてます。

▽ネタになる?
 体中のメラニンがやられるので、耳鳴りやめまいもあります。ステロイド治療の影響か、冷えもひどい。明るい所、うるさい所、寒い所が駄目なので、仕事の幅はずいぶん狭まりました。講演なんかパーってライト当たるでしょ。審議会やなんか、いろんな会議も降りちゃったし。でも今また細かい資料を読む仕事をしていて、参ってるんですけどね。

 とにかく病気知らず、疲れ知らずでしたね。入院なんて、3人の子を産んだときしかしたことないんだから。でも50を過ぎると、まあなんかあるだろうなと。歯科医としてバリバリ働いていた母も、更年期がひどかったですから。ははあ、私の場合はこれかあって。

 珍しい病気だから「あ、これネタになるかしら」って、物書きとしてはちょっと思いましたよ。ふふ。まあ、命に関わりはないからですけどね。「明るい原田病日記」という本を書きましたけど、「珍し過ぎてあんまり売れないわね」なんて言われたりして。

▽自然が救いに
 病気になった当時、宮城県の丸森町に小さな畑と家を借りていて、そこに行くのが救いでした。

 うるさくて慌ただしい東京での時間が、ゆっくりと溶けていく。私は街っ子で、仕事ももっぱら人間のこと、人と人との関係に興味が向いていたのが、だんだんと自然がとても近いものに感じるようになりました。

 今は信頼できる漢方の先生に薬を処方してもらっています。体を温めるのと、私の場合、水が滞りやすいのでそれを排出するもの。漢方はオーダーメードだからいいですよね。

▽つなぐ役目を
 その後も耳鳴りや頭痛にずっと悩まされてきましたし、目も見えにくくなっていくけど、年だからこんなもんかって思って。老いとも共存しないといけないですよね。私が休んでも世界は回っている。地下鉄は駆け込まなくても次が来る。一呼吸置いて、無理をしなくなりました。

 これまでに知り合ったお年寄りがいっぱいいますから、年を取ることはあんまり怖くない。仕事も、新しいことに手を広げるより、使った資料の整理とか、後の世代につなげるようなことをしたいと思いますね。

 こないだ出した「昭和の親が教えてくれたこと」も、そんな思いで書いたんですけどね。私たちが親の世代に教わったことって、いいことも悪いこともあるけど、子どもたちに伝わってないですよね。そんな世代と世代を結ぶ、環でありたいと思います。
(文・岩川洋成、写真・藤井保政)


 ◎森まゆみさん 1954年東京生まれ。出版社勤務を経て84年、地域雑誌「谷中・根津・千駄木(谷根千)」を創刊、2009年の終刊まで編集人を務めた。歴史的建造物の保存活動にも取り組む。「谷中スケッチブック」「千駄木の漱石」など著書多数。

 ◎原田病 体の免疫システムがメラニン色素をつくる細胞を誤って攻撃する自己免疫疾患。発見者の名を冠した病名で、かつては「原田氏病」とも。頭痛などの前駆症状に続き視力障害が現れることが多い。ステロイド投与で軽快するとされる。

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