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「病、それから」今村豊さん(ボートレーサー)気付いた自分の生真面目さ 

2016.12.6 9:36
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 時速80キロで水面を疾走し、ときに船体が激しくぶつかり合うボートレース(競艇)。デビュー以来トップ選手の座を守ってきた今村豊さんは、55歳のベテランになった今も全国のレース場を飛び回る。だが、順風満帆に見える選手生活の大半は、メニエール病という厄介者との一進一退の闘いでもあった。

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「病、それから」今村豊さん(ボートレーサー)気付いた自分の生真面目さ
 最初は30代半ばでした。ボートレース場で突然めまいが起きたんです。景色が左右に流れて見える。天地が分からなくなり、もう立っていられない。見た人によると、めまいに襲われている最中は、目玉がぴくぴくけいれんして揺れていたそうです。

▽耳の中のセミ
 めまい止めの点滴を打って休めば、そのときはいったん症状が治まりますが、完治したわけではない。調べても原因がよく分からない。レースはできるんですが、バランスがおかしい。

 当時はレース感覚も悪かったかもしれませんね。めまいで吐いてからレースに出る、そんなむちゃなこともしました。でも、ちゃんと上位の成績を保ってきましたよ。

 いったん小康を得ましたが、40歳を過ぎてしばらくしてまた始まった。今度は耳鳴りまで起こった。

 経験した人でなければ分からないでしょう。左耳だけですが、耳の中でセミが鳴く。「ジージージージー...」。1秒たりとも治まらない。耳鳴りは今もずっと続いていて左耳はほぼ聞こえません。だから静かな所は嫌いです。周囲がざわついていれば、多少なりとも耳鳴りが減ったような気がするので。

 この時期はめまいの発作の間隔が縮まったし、首の張り、肩こりも取れなかった。レース場で症状が出て、立て続けに途中欠場したこともあった。欠場はファンにも関係者にも迷惑を掛けますから、引退も考えました。

▽全てを背負って
 病気の原因ははっきりしないが、ストレスが関係している。そう言われて思い当たる節がありました。

 私は生真面目で負けず嫌い。物事をごまかすのが嫌なんですよ。レース場ではお客さんの期待がある。着順も良くしたい。全てを背負って走る責任を感じます。趣味のゴルフでも負けたら悔しくて仕方がない。家でもレース場でも、物が散らかっていると、片付けるまで落ち着かない。

 症状が治まらない頃は、その性格がストレスを増やしていたのかもしれません。体調が悪いときは、レースに出てもやっぱり良い着順は取れないです。それでさらに悩んで...。一時はうつっぽかったですね。

 妻に繰り返し「もっと気楽に」と言われました。彼女はおおらかだからよく見えていたのかも。「力を出せたのなら、着順はどうでもいいじゃない」って言ってくれました。

▽医者のつもりで
 めまいの発作を繰り返して、いろいろな病院にかかるうちに「自分で対処して、付き合っていくしかない」と気付いたんですよ。原因も分からない、特効薬もない。命に関わらないからあまり研究されていないのかなあ。だから、どうやってストレスから逃れて、体調を良くするか、自分が医者になったつもりで考えようと思いました。

 幸い今は発作もなく、落ち着いています。でもね、レースのストレスは本当に大きいんです。恐怖心は、レース経験を積んでも減らない。むしろ危ない目に遭うごとに恐れが高まる。怖さを感じずに走ったことはこれまで一度もありません。完全に治るとすれば、仕事をやめてからですね。
(文・由藤庸二郎、写真・山田敏樹)

◎今村豊さん 1961年山口県生まれ。81年にデビューし、当初からトップレーサーとして活躍、多くの大レースで最年少、最多優勝の記録を塗り替えた。「ミスター競艇」「艇界のプリンス」と呼ばれる。妻の真知子さんも元ボートレーサー。

◎メニエール病 難聴や耳鳴りなどの聴覚症状を伴って、めまいの発作を繰り返す病気。内耳の内リンパ腔と呼ばれる部分の圧力が高まって起きるが、原因は明らかでない。睡眠不足や過労、ストレスが発症のきっかけになるとされている。

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