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医療新世紀

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高齢者の血糖下げ過ぎ注意脳卒中などリスク上昇主治医と相談を

2016.12.27 9:36
 糖尿病は、血糖が高い状態を放置すると全身の動脈硬化が進み、目や腎臓などに重い合併症が出る恐れがある。だから治療の基本は血糖を下げること。しかし近年、特に高齢者で下げ過ぎのマイナス面が明らかになってきた。専門学会が高齢者向けに柔軟な血糖管理の目標値を発表するなど新しい動きが出ている。

高齢者の血糖下げ過ぎ注意脳卒中などリスク上昇主治医と相談を
▽目標緩和
 血糖の管理には、過去1~2カ月の平均血糖値を反映する「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」と呼ばれる指標(単位は%)が使われる。一般成人患者が合併症を防ぐには、これを7%未満に抑えるのが望ましいとされている。

 日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が2016年5月に公表した、65歳以上の高齢糖尿病患者の血糖管理目標も、基本は変わらない。だが、例えば75歳以上で特定の薬を使用している人の目標値は「8%未満」に緩和。さらに、これよりは下げないという下限値(7%)も設けたのが特徴だ。

 背景には、血糖を下げ過ぎると高齢者にはかえって有害な場合があるとの研究が、内外で増えてきたことがある。

 国内では高齢患者千人余りを01年から平均6年追跡した「J―EDIT」研究が有名だ。研究を率いた東京都健康長寿医療センターの荒木厚・内科総括部長らがデータを詳細に解析した結果、HbA1cが7~8・4%だと脳卒中の発症は少ないが、それより低くても高くても発症リスクが上がることが示された。7%未満だと重症の低血糖が増えるとの研究もある。

▽SU薬
 重症低血糖とは、意識を失うなどの重い症状を伴う低血糖のことだ。「この発作を起こした人は、心筋梗塞やさまざまな病気のリスクが増えることが明らかになってきた」と野田光彦・埼玉医大教授(内分泌・糖尿病内科)は解説する。

高齢者の血糖下げ過ぎ注意脳卒中などリスク上昇主治医と相談を
 特定の薬、例えば「スルホニル尿素(SU)薬」という飲み薬やインスリン注射を使用している高齢者は重症低血糖になりやすいことが分かっており、注意が必要だ。

 国立国際医療研究センター(東京)などの研究班が05~13年の糖尿病患者4500人余りの薬を調べたところ、SU薬やインスリンの使用は、若い患者より高齢患者に多いことが分かった。

 分析を担当した虎の門病院(東京)の本田律子・健康管理センター医長は「高齢患者は長く患った結果、血糖管理に強力な薬が必要な場合が多い。それを反映しているのでは」と話す。その後新薬が登場し、SU薬の使用は減ってきたとみられるが、厚生労働省の調査でも糖尿病患者に占める高齢者の割合は7割に迫る。注意すべき患者は意外に多い可能性がある。

▽抵抗感
 一方、長年の努力で血糖を低く抑えてきた高齢患者の中には、目標値の緩和を受け入れにくい人もいるという。野田さんを主治医として10年近くインスリン注射を続けてきた70代後半の男性もそうした一人。

 7%未満を保ってきたHbA1cを「もう少し高くても大丈夫ですよ」と促されても「今まで頑張ってきたのに」と戸惑いが強かった。約半年かけてインスリンを徐々に減らし、最近は7%台で落ち着いているという。

 「真面目に頑張るタイプの人ほど意識を変えにくい。高齢者は個人差が大きく一律の正解はないが、75歳以上でSU薬やインスリンを使っている人は、一度主治医と話し合ってみるとよいのでは」と野田さんは勧める。

 自分の薬がSU薬かどうかは医師や薬剤師に尋ねれば分かる。インターネットでは国立国際医療研究センターのサイト「糖尿病情報センター」なども役に立つ。
(共同通信 吉本明美)

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