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「病、それから」樋口恵子さん(評論家)多病息災、制度にも感謝 

2017.2.7 9:32
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 いち早く「人生100年時代」を唱え、"大介護時代の水先案内人"を自任する評論家の樋口恵子さん(84)。歯切れ良くユーモラスな語り口ながら目線が優しいのは、病気を重ねた「病み上手」のたまものだ。

「病、それから」樋口恵子さん(評論家)多病息災、制度にも感謝
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 子どもの頃から腎炎、結核、子宮筋腫、変形性膝関節症...と数々の病気になりましたが、多病息災。「病気は付き合うもの」と思っています。

▽真夜中に手術
 2003年に皆さんに推され、東京都知事選に出馬しました。現職の石原慎太郎氏の再選が確実でしたが、女性や民主的な勢力が反対の意思表示をしないままなのは忍びなかった。訴えたのは「都民が主役」。今の小池百合子知事は「都民ファースト」と言ってますが、同じ意味よね。

 惨敗したものの、その後も仕事の依頼は引きも切らず。今日は九州、明日は関西と講演に飛び回り、非常に多忙でした。

 09年のゴールデンウイーク直前のこと。全身の疲れとおなかが張った感じが続くので、医師として働く娘に相談したら「すぐ診てもらった方がいい」と。彼女の車で病院の夜間窓口に行きました。コンピューター断層撮影(CT)で、ぱんぱんに腫れた大動脈瘤が見つかり、直ちに救急車で専門病院に運ばれました。

 診断は「胸腹部大動脈瘤」。大動脈が4カ所もこぶ状に膨らんでいて「破裂し大出血したらまず助からない」という判断だったようです。3カ所を切除して人工血管に置き換える手術を受けることになったのです。

 真夜中の病院の廊下をストレッチャーで運ばれる私に向かって、医師が承諾書を読み上げました。「手術は4~7時間ほどかかり、死亡率は約8%です。手術の後遺症で右足が完全にまひする可能性が17・5%ありますが大丈夫...」って、全然大丈夫じゃない話です。

▽鬼のリハビリ
 手術は成功しましたが、「鬼のリハビリ」が待っていました。集中治療室で目が覚め、自室に戻って数時間後、2人の看護師が来て「起きてください。体重を測ります」。両脇を支えられ、死に物狂いで立ちました。続いて医師が来て、今度は「歩いてください」と。また両脇を抱えられ、引きずられるように100メートルほど歩きました。10日後にはリハビリテーション室に"出頭"を命じられ、おかげさまで3週間ほどで退院できました。

 傷は、おなかから胸の下で直角に曲がって背中に回り込み背骨の手前まで。ものすごく痛くて「痛い、痛い」と訴えたら、「世界で一番痛い手術です」と言われました。

▽持続させねば
 驚いたのは医療費です。世界一痛い手術の費用は約500万円。後期高齢者医療制度でも私の収入では自己負担率3割なので、150万円程度は覚悟していました。しかし実際の支払額はなんと約14万円! 文字通り、涙が出ました。医療費負担が過重にならないよう、一定額を超えると払い戻される「高額療養費制度」。素晴らしい仕組みを備えた日本の医療保険制度に感謝しました。

 しかし次の瞬間、背筋が凍り付きました。ピラミッド型の人口構成を前提にできたこの制度は、高齢者が増えて「つぼ型」になった今、現状のまま維持できるはずがない。社会保障審議会医療保険部会の委員として制度に関わってきた身です。持続可能な制度にしていかなければと痛感しました。私自身の課題です。

 これからも病気をし、そのたびに医療のお世話になるでしょう。でも働き続ける限り、制度を支える側でもいられる。体をいたわり、病にとらわれずにいたいと思います。
(聞き手・三好典子、写真・牧野俊樹)

◎樋口恵子さん 1932年東京生まれ、東京大卒。通信社記者などを経て評論活動に入る。女性の生き方や高齢社会、介護保険制度などについて活発に発言や執筆を続けている。東京家政大名誉教授、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。

◎大動脈瘤 心臓から送り出された血液を通す大動脈の一部が膨らんでできた「こぶ」のこと。胸から腹にかけての場所にできたものが胸腹部大動脈瘤。動脈硬化が主な原因で、通常、自覚症状は少ない。破裂すると大出血し生命の危険がある。

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